「山崎製パン」が自社トラックを持っているのはなぜか:数字のオモテとウラを学ぶコラム(2/4 ページ)
高速道路で立ち往生している人に、トラックの荷台に積んでいたパンを配った――。山崎製パンのドライバーが話題になりましたが、そもそも同社はなぜ自社トラックを所有しているのでしょうか。今回はその謎に迫ってみました。
売上は右肩上がりだが
山崎製パンの主軸は「食品事業」。単純にその売上高の推移を見てみると、興味深いのが、その成長の「堅さ」。2004年度からずーっと、売上高が増え続けているのです。リーマンショックがあった2008年ごろや、東日本大震災があった2011年は、どこの企業も多少なり業績に影響が出ているのですが、山崎製パンにはそれがないのです。
もちろん、「食」という必需品を扱っている企業ですから大幅な業績のブレが生じにくいのも事実です。しかし、マクロ指標を見れば、2005年ごろから日本の人口が減少に転じています。すなわち、“胃袋”は減っているにもかかわらず、山崎製パンはその成長を止めることなく拡大を続けているのです。
その一方で、営業利益(売上から売上原価、販売費などを差し引いたもの)は横ばい。つまり、売上が増えても、その分だけ増えてしまっている費用があるために、利益が増加していないのです。
その主な原因は「運搬費」。そう、今回ヒーローとなったトラックにかかっている費用です。私たちの心を温かくしてくれたトラックですが、もしかしたら山崎製パンにとっては重いコスト要因になってしまっているのかもしれません。
昨今のエネルギーコストの高騰や、インターネットショッピングの普及などに伴い、運搬費は企業の収益性を左右する重要なファクターになってきています。運搬費を合理的に低く抑え、なおかつスピーディーな物流を実現するために、外部の輸送業者を積極的に活用する動きも盛んになってきました。
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