進化し続ける“定番商品”――「キットカット」の新たなブランド戦略に迫る:高級路線の展開もヒット中(1/2 ページ)
ネスレ日本が2013年の業績を発表した。「ネスカフェ」を代表とするコーヒー関連事業が主力の同社だが、最も大きな成長を遂げたのは「キットカット」だ。40周年を迎えたキットカットの売り上げが伸びた理由はどこにあるのか?
2月13日、ネスレ日本(以下、ネスレ)が2013年の業績を発表した。為替変動などの影響を除いた、売り上げの対前年伸び率を示すオーガニックグロース(OG)は4.1%、営業利益では7.8%の成長となった。「先進国市場が伸び悩び、オーガニックグロースが平均約1%という状況のなか、日本は4%を超える成長を実現した」と同社社長の高岡浩三氏はアピールした。
ネスレは2013年、すべての「ネスカフェ」製品をインスタントコーヒーから「レギュラーソリュブルコーヒー」に一新し、家庭外の飲用機会促進の施策「ネスカフェシステムインサイド」を大々的に展開するなど、コーヒー製品に注力してきたように見える。しかし、実際にネスカフェよりも高い成長を遂げているのは、キットカットだ。
カテゴリー別で見ると、チョコレート・菓子類のOGは9.8%の成長、営業利益に至っては32.5%も増加している。売り上げ全体に占める割合は12.7%と決して大きくはないが、2013年の成長を支えた主要因と言える。1973年に日本で発売し、約40年の歴史を持つキットカットが、ここにきて売り上げを大きく伸ばしたのは、なぜなのか。
成長を支えたオトナの甘さシリーズ、京都府とのコラボでヒット
2013年にヒットしたのは「キットカット オトナの甘さ」シリーズだ。甘さを控えつつ、細かく砕いたビスケットをチョコレートに入れて軽い食感を目指した製品だが、今やこのオトナの甘さシリーズが、キットカット全体の売り上げの3分の1を占めている。シリーズ全体における2013年の売り上げは、前期比で30%以上増加するなど、快進撃が続いている。
「競合他社がこのオトナの甘さをまねて、大人用の製品を展開したが、むしろそのようにまねされるのは、こちらとしては好感が持てる。業界全体を先導していくような、イノベーティブな存在であり続けたい」と高岡氏は発表会で述べた。
オトナの甘さシリーズは、スタンダード製品に加えて、期間限定で抹茶、ストロベリーなどのフレーバーがあるが、最も売れているのは抹茶だという。2012年に初めて登場したが、2013年に再登場し「京都PRパートナー」に選ばれたことでブレイク。2013年2〜8月で約900万袋が売れ、売り上げは前年同期比で180%に達した。京都文化の普及や、抹茶の魅力を伝える商品として認知度も高まり、海外からの観光客にも人気が出た。
「キットカットは世界中で認知されているブランドなので、海外旅行のお土産として買いやすい。日本の色が強い抹茶味は、中国や台湾など多くの外国人観光客に人気が出ました」と話すのはネスレ日本 マーケティング&コミュニケーションズ本部 メディアリレーションズ室の細川得央氏。このオトナの甘さは2010年9月に発売したシリーズだが、新たなユーザー層を獲得するための施策だったという。
「当時、キットカットといえば、口コミで“きっと勝つ”という語呂が広まったことから、受験のイメージが強かったんです(参考記事)。『おいしさ』とともに情緒的な価値も求められる製品でした。10代や20代前半の間で認知度は高かったのですが、それより上の世代になると、受験を思い出す“懐かしい”製品になっていました」(細川氏)
そこでネスレは、新たな柱になる製品として、オトナの甘さシリーズを開発に着手した。パッケージの色を黒にし、赤と黒の“2色展開”という宣伝を行った。発売当初はお互いの市場を食い合う懸念もあったが、キットカット全体の売り上げは順調に伸びた。
「日本はもともとキットカットの消費量が多い国。世界でもイギリスに次いで第2位なんです。フレーバーの数はお土産として人気の高い“ご当地キットカット”を含めれば、これまで200種類以上販売しておりダントツ。ほかの国は5〜6種類ぐらいですから。こうした取り組みは海外でも高い評価を受け、注目されています」(細川氏)
オトナの甘さシリーズは、通常のキットカットに比べてやや割高だ(大袋タイプだと価格は同じくらいだが、内容量がやや少ない)。ご当地キットカットの価格も通常のキットカットの2〜3倍だが、それでも限定品とあって売れ行きはよいという。こうして従来製品よりも高価格な商品が好調に売れていることが、利益増につながっているのだ。
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