ウクライナはロシア“最後”の緩衝地帯:藤田正美の時事日想(1/2 ページ)
ロシアが軍事介入を行い、混乱しているウクライナ情勢。ウクライナがロシアにとってどれだけ戦略的に重要な場所であるのか、藤田氏が解説する。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
今、世界の株価は2つのリスクに怯えているようだ。1つは本連載でも何度か取り上げてきた中国の金融リスク、とりわけ“理財商品”のデフォルトリスクである。もう1つはウクライナ危機だ。投資家がリスク回避の動きを強めているため、東京の株価も当面はさえない動きになるだろう。
ウクライナ危機は2月下旬ごろから急展開している。EU(欧州連合)との関係強化を望むデモに対し、強硬的な姿勢を取ってきたロシア寄りのヤヌコビッチ大統領。死者まで出る弾圧に、デモ隊も過激な手段で応じ、とうとうヤヌコビッチ大統領を追放してしまった。
ロシアのプーチン大統領は、ヤヌコビッチ大統領の“解任”はクーデターであるとし、大統領選挙(2014年5月)までの暫定大統領の正統性に問題があると主張した。そして、ロシア系住民が6割を占め、かつロシア黒海艦隊の基地セバストポリがあるクリミア半島の掌握に乗り出したのである。
この軍事介入に欧米は強く反発している。プーチン大統領と電話で会談した米国のオバマ大統領は、軍事介入はウクライナの主権を侵害するため、ただちに軍を撤退させるよう求めた。プーチン大統領はロシア系住民の保護を名目にこれを拒否している。
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