ウクライナ政変で登場した「ヒロイン」から日本が学べること:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
炎上するウクライナの首都で、「独裁から自由になりたい」と訴えかけるウクライナの美女。このようなプロパガンダ的なPR作戦が行われるのは外国の常識である。
オバマ大統領の弱腰が笑われている
話を戻すが、ユリアのようなプロパガンダまで入り交じるウクライナ情勢はしばらく落ち着かないだろう。大統領の座を奪われたヤヌコビッチは、ウクライナのクリミアでロシアにかくまわれているというのが大方の見方だ。だがクリミアでも、反ロシアと親ロシアの勢力が衝突しており、ロシア軍が介入する可能性も指摘されている。
そんな状況でやはり今注目されているのは、超大国である米国のバラク・オバマ大統領がどう動くかだ。オバマ大統領は2014年2月28日、記者会見を開き、ロシアのプーチン大統領に警告を発した。
「われわれは、ウクライナ国内のロシアの軍事的動きの報告に今、深い懸念を持っている」と、オバマは語った。さらに、ロシアがクリミアに軍事的に進行すれば、「代償」を払うことになると強気な発言もした。「米国は黙ってはいない」という意味だと捉えられている。
しかしながら、シリアの化学兵器使用は「越えてはならない一線」と宣言し、米国自身がアサド政権の化学兵器使用を強く非難しながら、結局はシリアに攻撃をしなかった。そのため、オバマの「口先だけの弱腰さ」が国内外で嘲笑(ちょうしょう)される結果となった。
その流れから、今回もプーチン大統領がクリミアでやりたい放題に振る舞っても、結局オバマ大統領は動かないという冷めた見方が広がっている。それでもオバマ大統領は、クリミアへの軍事的侵略を決めたプーチン大統領に電話をして「懸念」を伝えたと報じられている。だがプーチン大統領は「ロシア人の生命に関わる」と意に介さなかった。
歴史的に見れば、オバマ大統領は米国本土が攻撃された未曾有の9.11同時多発テロを犯した国際テロ組織アルカイダのウサマ・ビンラディンを殺害した(とされる)のだから、もはや何もしなくても偉業を成し遂げた大統領として名を残す。逆に言うと、できれば火の中に自ら飛び込んでやけどしたらたまらない、ということだろう。最近では、米軍の大規模な人員カットを検討していることからもそんな見方は強まっている。
オバマ大統領出演のショートムービー
しかもウクライナで大騒動が起きている最中に、オバマは別のことで話題になっていたのだ。オバマ大統領とジョー・バイデン副大統領が「出演」する1分間のショートムービーが公表されたのだ。肥満が問題になっている米国で、「動こう、運動をしよう」という啓蒙ビデオなのだが、そのぎこちなさに笑ってしまう。もちろん役者じゃないので当たり前だが。
ウクライナ情勢でオバマの動向を注視していた人たちは拍子抜けしたはずだ。そして、もはや緊張感が伝わってこないオバマに期待をしてはいけない、という思いを強くしたかもしれない。ウクライナ反体制派のヒロインであるユリアも、ユリアを担ぎ出した人たちも、きっとオバマには何も期待していないだろう。
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