社員が考えた面白いアイデアをマネタイズするのが経営者:世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる(2/3 ページ)
イノベーションにつながるアイデアは、最初からお金のことを考えていたのでは生まれません。面白いアイデアがあるのに、マネタイズすることができなければ、それは上司の責任です。
独自ブランドの豚を育てて売る
ここで、1つのプロジェクトを紹介させてください。リバネスには、「福幸豚」という「独自ブランドの豚を育てて売る」という養豚事業があります。
このプロジェクトを立ち上げた福田裕士には、「自分自身で豚を育てたい」という単純な、しかしとてつもなく大きなパッションがありました。彼はリバネスのインターン生だったころから養豚をやりたいと言っていましたが、当時のリバネスにはその力はなかった。だから、彼は1度別の畜産飼料卸売会社に就職し、直営農場で養豚を学びました。
あるとき、僕は養豚場で働く彼に告げました。
「1から10まで、福田自身の手で育てた豚を食べてみたい。1頭分全部買うから、俺に送ってくれ」
かつての仲間が手がけた豚が食べられるなんて、うれしいじゃないですか。でも彼は悲しそうに言うのです。
「それはできません。エサも品種も自分自身の手でつくることなんかできない。豚自体も精肉の段階で他の会社の豚と混ざってしまうし、ただの国産豚になってしまいます」
と。そしてさらに彼は続けて
「丸さん、そこが課題なんです。自分自身でつくった豚を届けられないことが」
と言うのです。ぼくは即答しました。
「じゃあ、うちで作ればいいよ。沖縄にいい場所がある。そこでエサ作りからはじめよう」
そして彼はぼくを信じ、会社を辞めてリバネスに転職しました。もうぼくも引き下がることはできません。彼のパッションをつぶすわけにはいかない。そこで舞台に設定した沖縄のことを調べていると、沖縄の養豚業界にもいくつもの課題があることが分かってきました。
実は、沖縄では大量に豚が消費されていますが、そのおよそ半分が輸入豚肉なのです。沖縄料理として有名なラフテーやテビチも、ほとんどが輸入豚肉で作られている。そして、エサの値段がどんどん高騰していたために、現地の農家がどんどんつぶれていたのです。ぼくはその悲しい現実を聞いて、でもこれはチャンスなのではないかと思いました。現地の課題と、福田の課題をいっしょに解決することができると考えたからです。
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