「アンネの日記」事件と「従軍慰安婦」のビミョーな関係:窪田順生の時事日想(1/3 ページ)
『アンネの日記』のページを破っていた、として36歳の男が逮捕された。なぜこの男は国際社会から非難されるようなことをしたのか。筆者の窪田氏は「犯人」の男に真意を聞いてみたいという。というのも、過去にもよく似た事件があったからだ。それは……。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
都内の図書館で『アンネの日記』のページを破っていた、として小平市の36歳の男が逮捕された。報道によれば、男は“動機”についてこんな供述をしているらしい。
「アンネの日記はアンネ自身が書いたものではないことを批判したかった」
なんてことを聞くと、「ああ、ソッチ系の人ね」なんて呆(あき)れるだろうが、実際に『アンネの日記』がアンネ本人ではなくゴーストライターの手によって書かれた“日記風小説”ではないかという論争は存在している。
13歳の女の子にしては文章が大人過ぎる。友だちに送った手紙と筆跡がえらく違う。戦後に発売されたボールペンで書かれているなどなど……STAP細胞の小保方さん論文ではでないが、さまざまな「疑義」が指摘され、ほどなく新垣さんさながら「私が書きました」というカミングアウトするゴーストも現れた。
結局、オランダ国立法科学研究所の筆跡鑑定で「本物」とされたが、いまだに「んなもん、あてになるかよ」と否定する方たちもいる。逮捕された男はそんな“説”を真に受けてしまったということなのだろう。
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