ウクライナはどこに向かうのか? 今がターニングポイントだ:藤田正美の時事日想(1/2 ページ)
クリミア自治共和国のロシア帰属に対する住民投票の結果、投票した人のほぼすべてがロシアへの帰属を求め、ウクライナからの独立も宣言した。これからウクライナがどうなるか、今がターニングポイントだと藤田氏は主張する。
誰も戦争を望んでいるわけではないのに、いつの間にか、戦いに向かって動き出し、気が付いたときにはもう引き返せない。歴史の中にはそのようにして始まった戦争も少なくない。その際に最も危険なのは、高揚した国民やナショナリズムである。
ウクライナはどこに向かうのか、今がターニングポイントだと言っても過言ではない。ウクライナの一部であるクリミア自治共和国は、3月16日に住民投票を行ったが、投票した人のほぼすべてがロシアへの帰属を求め、ウクライナからの独立も宣言した。反対している人は投票をボイコットしたのだから、この結果は当然といえる。
問題はここからだ。ロシアは当然のことながら「住民の意思を尊重する」と言い、欧米は「ウクライナの憲法や国際法に反しており、住民投票もその結果も認められない」とするだろう。クリミアの帰属問題について、ロシアと欧米が妥協できる結果に行き着くのか。それができない場合はどうなるのか。
クリミア半島はもともと“ロシア”のモノだった
最も望ましくないのは、もちろん軍事対立だ。欧米とロシアが直接的に軍事対立するのは考えにくいとしても、ウクライナ軍とロシア軍の対決はありうる。そうなれば、欧米はウクライナ軍に軍事支援をする。ロシア軍がクリミアに“進駐”していることは周知の事実だし、ロシアとウクライナの国境にも集結している。ウクライナ軍もこれに対抗して、兵員を増やしているのだ。
ただ、この構図をロシアのウクライナに対する侵略ととらえると、全体像を見誤るかもしれない。そもそも、クリミア半島は元来ウクライナ領であったわけではない。1954年にソビエト連邦の指導者、フルシチョフがクリミア自治共和国をウクライナの一部としたのである。ソ連の時代はそれで問題はなかったが、ソ連が崩壊して以来、ウクライナそのもの、特にロシア海軍が基地を置くクリミア半島が不安定になった。
それにロシアの防衛上、ウクライナは必要不可欠な存在である。もしウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟したら、モスクワは丸裸も同然だ。ロシアのプーチン大統領は、いかなる代償を払っても、ウクライナがNATOに加盟する事態は防ごうとするだろう。逆に言えば、欧米はウクライナを西側の軍事同盟に入れようとすべきではないのだ。
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