職業人生の出発にあたり、心得ておきたいこと:新社会人に贈る(5/5 ページ)
この春、就職する新社会人は、いまどんな気持ちでいるのでしょうか。不安と期待……そんな気持ちが入り混じっているかもしれません。これから何十年と続く職業人生の出発にあたり、大切なことをお伝えします。それは……。
人間はどうしても自分のやっていることに意味を与えたくなる動物です。それは意味からエネルギーを湧かせたいためであるし、意味を満たすことによって自己の存在を太く感じたいからです。そして共通の意味のもとに人とつながりたいからです。
「仕事に高尚な意味は不要」と言っている人の中には、実はボランティア活動に汗を流す人も多くいます。この問題の本質は、昨今の事業現場では各人が担当する業務があまりに細分化・専門化され、あまりに数値目標達成が重くのしかかっているために、自分の仕事に意味を与えづらくなっているところにあると私は分析しています。ですから人は決して意味を放棄しているわけではないのです。
また、昨今ではメンタルヘルス(心の健康)の問題が大きくなっています。やはり、自分の仕事に意味を見出している人は、見出していない人よりも、当然ストレスに強くなります。上のフランクルは、実は収容所に送られる直前、長年の研究成果を出版する計画があり、原稿まで書き上げていました。収容所に囚(とら)われたフランクルは、あの論文を世に出版するまで死ねるかという執念に近い意味を持ち続けました。だからこそ、あの凄惨な収容所を生き抜く精神エネルギーを得たのだと言います。彼が発した「意味の鉱脈を掘り当てた人間は、同時に苦悩に耐える力を持った者になる」は、そうした含みです。
みなさんはこれから何十年と働いていくにあたって、生命を取られるほどではありませんが、さまざまなストレスにさらされることになるでしょう。そのときに覚えておいてほしいのは、働く心の上で、最大の攻めであり、最大の守りとなるのは、仕事に意味を与えることです。その「意味」とは、先の「5つの動機」図でみたように「お金のために」というだけでなく、他の4つも含めて重層的に与えることが大事です。当面は仕事をこなすことだけに手一杯かもしれません。ですが、時間をかけながら、ぜひ上のほうの段階まで仕事への意味付けを分厚くしていってください。(村山昇)
関連記事
- ブラック企業問題はなぜ「辞めればいいじゃん」で解決しないのか
従業員を劣悪な環境で働かせ、使い捨てにする――。いわゆるブラック企業が社会問題になっているが、なぜそこで働く人は会社を辞めようとしないのか。その背景にあるのは……。 - 宋文州氏が語る、日本人が「多様性」を受け入れられないワケ
日本に多様性は必要だと思いますか? こう聞かれると、ほとんどの日本人は「必要だ」と答えるはずだ。にも関わらず、なぜ日本では多様性を受け入れる考え方が広がらないのか。その疑問を、ソフトブレーン創業者の宋文州氏にぶつけてみた。 - 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由
国民年金、給食費、授業料、治療費……今、公的な支払いを踏み倒す人が増えている。この背景には、いったいどんな「裏」があるのだろうか? - ゆとり教育で育った世代は、本当に仕事ができないのか
「若手社員が思うように育たない。その原因は“ゆとり教育”にある」と思っている人もいるだろう。しかしこの考え方は、本当に正しいのだろうか。原因は学校教育にあるのではなく、バブル崩壊以降の働き方の変化にあるのかもしれない。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.