利用者激怒、信頼失墜……交通機関のストライキに効果はあるのか?:杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)
3月20日、関東バスと相模鉄道・相鉄バスの3社がストライキを決行した。法律に基づいた行動だが、利用者からは歓迎されず、現場の労働者自身が批判の矢面に立たされている。労働争議の手法は長い間変わっていないが、そろそろ新たな戦術が必要ではないか。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
ストライキとは、労働者が雇用者に抗議するため、働かないで企業活動を停止する手法だ。武力によらず、会社に「機能停止」という打撃を与える。その思想は1920年にマハトマ・ガンジーが実施した「非暴力」「不服従」に近い。ただしストライキの元祖はもっと古く、紀元前のエジプトで、墓の装飾職人たちが起こしたという。理由は給料遅配への抗議だったそうだ。
ストライキの目的は紀元前から現代まで変わらない。労働者をないがしろにする雇用者への抗議である。墓の装飾職人が働かなければ、墓の管理者は顧客に対して墓を売れない。工場の職人たちが働かなければ、会社は納期を守れない。だから労働者のストライキは雇用者にとって、文字通りストライキ(打撃)となる。
しかし、交通機関の労働者がストライキを実施した場合は趣が異なる。運賃収入がなくなるから、確かに雇用者にとって打撃になる。しかし、その運賃収入をもたらす顧客も輸送サービスが受けられず迷惑を被る。交通機関のストライキは、雇用者だけではなく、顧客にも直接的な損害を与えてしまう。
ストライキの仕組み、理由を考えれば、本来は利用者が批判すべきはストライキを起こす理由を作った会社のほうかもしれない。労働者の要求が会社経営を脅かすほど理不尽であるか、会社の方針が労働者をないがしろにしているか。迷惑を被った利用者は、怒りの矛先として、どちらが相応しいかを見極める必要がある。
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