利用者激怒、信頼失墜……交通機関のストライキに効果はあるのか?:杉山淳一の時事日想(2/6 ページ)
3月20日、関東バスと相模鉄道・相鉄バスの3社がストライキを決行した。法律に基づいた行動だが、利用者からは歓迎されず、現場の労働者自身が批判の矢面に立たされている。労働争議の手法は長い間変わっていないが、そろそろ新たな戦術が必要ではないか。
労働組合の主張を見る
関東バス労働組合と相模鉄道労働組合は2014年3月20日始発からストライキを決行した。労働組合と会社側の妥結まで、関東バスの路線と、相模鉄道、相鉄バスが動かなかった。関東バスは同日16時にストライキを解除。相模鉄道と相鉄バスは6時30分にストライキを解除した。関東バスの場合は通勤通学客を直撃した。相模鉄道と相鉄バスは通勤ラッシュのピークは回避できたとはいえ、遠距離通勤者、早朝出勤者の時間帯にかかってしまった。
報道によれば、現場の職員に怒鳴りつけるなど激しく苦情をいう利用者もいたという。ただし、ストライキについては事前に告知され、利用者側の事前の対処も可能であった。ストライキは労働者の権利の1つだが、合法的な権利遂行のためには、要求に正当性があり、事前に会社に対して通告する必要がある。駅などにポスターが貼られ、車内放送があり、報道もされるから、現場でのトラブルはさほど深刻ではなかったと思われる。野次馬的に改札口のトラブルを報じるだけではなく、労使の言い分を報じてほしかった。
今回、ストライキに至った理由などについて、相模鉄道労働組合はWebサイトで主張を公開している。賃金ベースアップの要求を会社が認めないという理由だが、そのなかで気になる一文がある。
相鉄は、賃上げにまわすことを理由に政府が前倒しで廃止する「復興特別法人税」分(3億円以上と推計され、相鉄グループ全従業員5000人に還元した場合一人6万円以上になります)でさえ、労働者への還元を「予定していない」との姿勢に終始しています。(参照リンク(PDF)
いわゆるアベノミクス政策のひとつとして、政府は企業に対して賃上げを要請している。クチだけではなく、財源となる法人税減税もセットにしていた。減税を受けて賃上げをしないとなれば、これは会社と政府との約束に反している。これが労働組合の主張であり、客観的に理解できるところである。また、労働組合の要求は4月からの消費税3%上昇に対して、本給の2%+ベースアップ分3700円のアップであった。
もちろん会社側にも事情はある。いま、相模鉄道は転機を迎えている。2018年度にJR東日本と直通運転を実施し、2019年春には東急とも直通運転を実施する予定だ。このうちJR東日本との直通運転については、2015年春の予定が3年も延びた。理由はJR東日本の接続部の工事が遅れているからである。一方、相模鉄道は2015年の直通に間に合わせるために、既存路線の改良工事や車両の増強など投資していた。事実上、その資金が3年も寝かされてしまった。遅延損害額や今後の開通時期のリスクを考えると内部留保を増やしたい。
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