「買ってから選べるEC」――ロコンドが華々しい初年度の大失敗から学んだこと:これからの働き方、新時代のリーダー(2/3 ページ)
顔が見える、おもてなしのECとしてスタートしたロコンドだが、初年度は大きくつまずいた。何が悪かったのか? 熟考が足りなかったことに気付いた同社は、商売の本質に立ち戻った。
提供すべきは「おもてなし」ではなく、「ほっこり」体験
岡田: ロコンドは、「おもてなし」の心で徹底した顧客サービスを提供すると強調していましたね。その考えは変わってませんか?
田中: 戦略の根幹部分は変わってませんが、今では「おもてなし」から「ほっこり」に変わりました。おもてなしというと「いろいろやってあげる」というニュアンスもあって、われわれが本当にやりたかったのはこれなのか? と。
岡田: 「ほっこり」ってどんな体験ですか?
田中: ロコンドはECサイトですが、単純に商品を販売するのではなくて、その体験を提供したいと思っています。じゃあ、それがザッポスのような「ワオ(WOW、期待以上のものを得たときの感動)」なのかといえば、それも違います。「ワオ」は刹那的というか、お客さんが1回、「ワオ」となったことに、2回も3回も「ワオ」とはなりませんよね。
ロコンドは、お客さんと中長期的な、近い距離での心のつながりを持ちたいと思いました。それを表現する言葉が「ほっこり」、日常的な居心地の良さです。これは、「買ってから選ぶ。」というロコンドのビジネスモデルにも通低しています。
岡田: 返品可能だし、返品に費用もかからないので、サイズが分からなかったら複数購入して、不要なものは返品OKという使い方ですよね。
田中: 自宅で試着できることって、すごく楽しい体験だと思います。あるお客さんからメールをもらいましたが、その家庭ではまず奥さんが靴を購入した。試着して選べるという体験が楽しくて、次に子どもの靴を購入して、その次にご主人の靴を購入して。今では、月に1回、週末が大試着会になったといいます。
ほっこりには「自宅で」という部分が重要なんです。店頭での試着って、いろいろ疲れませんか? 小さい子どもがいたら、時間を費やすだけの作業になりかねません。でも、自宅であれば心行くまで、それこそエンターテインメントのように試着を楽しめると思うのです。
岡田: 足のサイズって、朝と夕方では違いますしね。
田中: そうなんです。外反母趾(がいはんぼし)を患っているお客さんにとっては、試着は生命線なんですよね。ロコンドなら、朝夕どころか、寝起きから就寝直前まで何度でも試着できます。これは店頭ではできませんし、たとえできたとしても4回も来店して試着したら、「そろそろ買ってくれませんか?」といわれかねない(笑)。
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