どうなる? 日本のカジノ――“役者”はそろった:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
カジノやホテルなどIR(統合型リゾート)を日本にも作ろうという機運が高まってきた。ただ、反対派も黙ってはいない。決起集会なるものをのぞいてみると、予想以上の盛り上がり。さて、この争い……今後はどうなる?
住民に殴り殺されかねない
共産党の大門実紀史さん、社民党の福島瑞穂さん、という「反対運動」といえばおなじみのお二方が、「そもそも賭博は違法でお話にならない」とか「敗者を前提とするビジネスなど認めない」とかおっしゃって拍手を浴びるなか、その両者よりも輝いていらっしゃったのが、沖縄社会大衆党の糸数慶子参議院議員だ。
全国区ではあまり有名ではないかもしれないが、IR関係者の間ではその名が轟(とどろ)いているアンチカジノの論客である。ちなみに、吉本興業など「沖縄カジノ」を推進する企業とガッチリと手を組む仲井眞弘多県知事の「天敵」としても知られている。
上品で穏やかな雰囲気のなかに強い意志を感じる語り口は、“保守のマドンナ”こと櫻井よし子さんをほうふつさせる。そんなキャラ的にみても、IR推進議論の盛り上がりによってメディアへの露出もグーンと増えていくことは間違いない。
無論、“反対ロジック”もしっかりされている。「カジノ問題を考える女たちの会」なる団体を設立し、もうかれこれ15年以上もアンチカジノ闘争を続けているという「実績」に加え、韓国やマカオに足を運び、ギャンブル依存症や、カジノのかたわらで増加する売買春問題を現地調査しているため、他の反対派と比較して「説得力」がある。
それらの「調査結果」をまとめたDVDはなかなか秀逸である。例えば、『カジノの街は今 韓国・江原道』なるタイトルの映像では、韓国内で唯一の自国民に開放されている「江原ランド」を現地調査。なかでもインパクトがあるのは、古江信用組合のチェ・ドンスン理事長などへのインタビューである。
彼は自らのことを、過疎地となった炭坑街・江原道の振興のためにカジノを推進した張本人だとして、このようにぶっちゃける。
「このままでは住民に殴り殺されかねない」
ご存じの方も多いと思うが、江原ランドでは今、ギャンブル依存症がえらい問題になっている。近くには質屋が並び、カジノですってんてんになった人々が家族に見捨てられ、ホームレスに身を落としたり、廃墟となった団地に住み着いたりしているんだとか。
当然、強盗や空き巣などの犯罪も増えた。つまり、カジノで雇用は確かに増えたものの、治安がドカンと悪くなったというのである。こうなってしまうと、ファミリー層などは逃げていく。
後に残されたのは、年寄りや引っ越すことができない貧しい人たちばかりとなり、不満や怒りが「カジノで過疎の街がよみがえる」とふれまわった推進派たちへ向けられているというわけだ。
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