経済低迷が続くインド――救世主は「トイレ」!?:伊吹太歩の時事日想(2/4 ページ)
今やGDPでは世界で10本の指に入るまでに成長したインド。華々しい経済成長の裏に、深刻な衛生問題があるのはご存じだろうか。この“トイレ問題”から子どもたちを救うべく、ユニセフが国際機関らしからぬポップな施策を展開している。
健康問題に苦しむインドの子どもたち
インドで学校に通う子どもが苦しむ健康問題は、1位が下痢で、2位が寄生虫感染だ。その原因となるのは、人々がそこらじゅうで排泄を行う不衛生な環境にほかならない。水道施設も不十分なため、飲み水に細菌が混じり込むことだってある。手に雑菌が付いても洗い流すことなく、手づかみで食事をする。
特に子どもの半数は栄養失調気味で、健康状態がよくないために細菌やウイルスに弱い。日本では下痢で死亡するなんて想像しにくいかもしれないが、途上国では激しい下痢による脱水症状などで、1日に1600人の子どもが死亡している。
そんな子どもを取り巻く排泄環境も、以前よりはいくらか良くなったという。2006年にはインド国内にある学校のうち、半分近くにトイレがなかったが、今では8割以上の学校で、少なくとも1つはトイレが設置されている。とはいえ、逆の見方をすれば、残り2割程度の学校に通う子どもたち(約2800万人)は、今も外で排泄をしていることになる。
特に女子の場合、家でもトイレにプライバシーがないために、多くの女子は外が暗くなるまでトイレを我慢することもあるという。学校にトイレがあっても「女子トイレ」が存在しない場合も多い。思春期になれば、学校にトイレがない、またはトイレにプライバシーがないために、学校に行かなくなる女子も少なくない。そのまま中退してしまうケースもあるそうだ。
こうした衛生問題に対してはシンプルな解決策がある。とにかくまず、外で排泄するのをやめてトイレを清潔に保ち、衛生状態を改善すればいい。そして、子どもの生活改善などに取り組む国連児童基金(ユニセフ)はちょっと面白いやり方で、インドの排泄問題への対策に乗り出している。このユニセフのキャンペーン、成功すればなんと低迷するインドの経済をも、結果的に救うかもしれない可能性を秘めているのだ。
関連記事
- くう、ねる、そして――自然写真家、糞土師 伊沢正名さん
今回のインタビューのテーマは「真面目な排せつ物の話」。食事中の方、排せつについての話題に抵抗がある方は決してこの続きを読まないでいただきたい。了承してくださった方だけ、さあ本文へ。 - なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。 - 市販ペットボトル飲料水のうち、約半数は「ただ」の水道水
米国の消費者団体が調査したところによると、市販しているペットボトル飲料水のうち、約半数のブランドが水道水だという。ペットボトル飲料水を購入するのはカネの無駄か――そんな議論が世界各国で巻き起こっている。 - インドと中国の「領土問題」に巻き込まれる日本
スイスで開催されたダボス会議で中国をけん制し世界のメディアをざわつかせ、その足でインドを訪問した安倍首相。単純な対中包囲網へのコネクション作りとはいえないようだ。 - 日本人も要注意、集団レイプ判決から見るインドの闇
最近、インドで発生する集団暴行事件のニュースを日本メディアも取り上げるようになった。事件の背景を追ってみると、根強く残る女性差別が浮き彫りになる。 - 連載:伊吹太歩の時事日想 一覧
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.