注目高まる動画配信ビジネス、成功へのカギと大きな課題:真の『動画元年』を迎えるために(2/2 ページ)
日テレによるHulu買収、KADOKAWA・DWANGO誕生など、動画配信ビジネスに注目が集まっている。技術環境やプラットフォームがそろってきたものの、動画ビジネスの普及にはまだ課題があるという。それは何か?
Web動画普及のカギは「質の高いサービス」と「収益性」
このようにプラットフォームがそろい、動画をストレスなく見られるデバイスや通信環境も整備されてきたものの、それでも「動画サービスが広く普及するには、まだ障壁がある」と日本カントリーマネージャーの磯崎順信氏は話す。
理由は大きく3つある。1つは動画を視聴する文化がまだ根付いていないことだ。総務省が2012年度に調査した結果(平成24年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 報告書)によると、Web動画の視聴時間は10代で約23分、20代で約18分、30代で約4分という結果に対し、テキスト系Webサイトの利用時間は10代で約45分、20代で約50分、30代で約30分と大きな開きがある。
また、動画視聴に特化したサービスが少ないことも、磯崎氏は問題点として挙げる。「日本は、動画の視聴体験に特化したコンテンツやサービスがまだ不足している。動画サイトでさえ、タイトルや説明を長々と文字で書いてあるパターンが多く、文字が多いなと感じることがある。動画の普及が進む米国などでは、ワシントンポストなどの大手メディアが動画専用のサイト(PostTV)を作るなどの事例もある。こうした文字が少なく、動画を直感的に選んで見られるコンテンツが数多く出てきている」と述べた。
収益性も大きな問題だ。現状の動画サービスは無料で利用できるものがほとんどだ。月額制や買い切り性などの仕組みはあるが「どれもあまり上手くいってはいない」(磯崎氏)という。そうなると、収益は動画広告に頼ることになるが、日本ではアクセス数が少ないため広告の単価が低く、コンテンツやその配信、プロモーションといったコストに追いつかないという。一方、「米国におけるWeb動画広告の単価は日本の2〜3倍で、市場規模は40倍ほどある」(磯崎氏)という。
2014年に入って、日本テレビやKADOKAWAといった大手企業が動きを見せたことから「2014年は『動画元年』になる」と言う人もいる。しかし、磯崎氏は「『動画元年』はまだもう少し先になるだろう」と話す。
「『動画元年』という言葉は、日本でここ数年言われ続けているが、多くの動画系サービスが安定して黒字を出せる状況になったときに、初めて『動画元年』と言えるのではないか。とはいえ、Web動画の視聴時間は増えているなど、動画が普及する素地はある。ユーザーが本当に使いやすいと思えるサービスが出れば、状況は大きく変わるはずだ」(磯崎氏)
関連記事
- アイルトン・セナ、フェンシング、Perfume――電通・菅野薫氏に聞く、「広告×データ」の可能性
アイルトン・セナの1989年の走りを光と音で再現。東京オリンピック招致成功の一因となった動画。カンヌでのPerfumeのパフォーマンス――これらの共通項は“データ”だと、生みの親である菅野薫氏は話す。その真意とは? - YouTubeやUSTREAMで「5秒後スキップ」を押さずに広告を見る割合は?
ネット動画の人気に伴い、ネット動画広告の関心も高まっている。YouTubeやUSTREAMでは「5秒後スキップ」の表示とともに動画広告が流れることも多いが、どれくらいの人が広告動画を見ているのだろうか。 - PCでネット動画を見る人――10〜20代では7割を超える
動画コンテンツをネット経由で見ている人はどのくらいいるのだろうか。東京都に住んでいる人に聞いたところ、全体で「見ることがある」と答えた人は半数を超えた。電通とオーディエンス・インサイト研究所調べ。 - YouTubeが新広告「プロモート動画」、“月間7億件”の検索と連動
米国で先行して始まっていた検索連動型広告「プロモート動画」が国内でもスタートした。設定したキーワードに基づいて、検索結果ページに自社動画へのリンクを表示する仕組みだ。 - 男女・年代別マーケティングは「もうできない」 マルチデバイス時代の情報行動5つのタイプ、Googleが分類
Googleがテレビ、PC、スマホの3つのデバイスを利用するユーザーを対象に行動分析し、情報接触行動を5タイプに類型化した。「F1層もM1層も、もういない」という。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.