ウクライナ、エジプト、タイが世界を変える? 混乱だらけの国際情勢を読み解く:伊吹太歩の時事日想(1/3 ページ)
世界各地で独立運動やクーデターが立て続けに起こるなど、国際情勢は混乱が続いている。こうした動きは、米国の影響力が低下したことが原因だ。世界は一体どこに向かっていくのか、ウクライナ、エジプト、タイの3国がそのカギを握っている。
著者プロフィール:伊吹太歩
出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
最近、世界中で大きなニュースが続いている。新聞の国際面を見ていても「何に注目すればよいのか分からない」という人も多いのではないか。それもそのはず、2014年は世界各国で大統領選挙などのイベントが目白押しとなる予定で、全世界の40%の人が投票を行うという。不慮の混乱なども起きるため、世界は刻々と動いているように見えるだろう。
世界が変化していく過程を振り返ってみると、やはり、米国の影響力が低下したことがすべての原因だと思われる。オバマ大統領は、ねじれ議会で国内問題が紛糾するなか、国外の問題まで手を広げられていない。そのため、国際的な影響力が著しく低下しているのだ。ちなみに、オバマ率いる民主党は秋に行われる中間選挙で、すべての議会で過半数の議席を取れない可能性すらある。
また、イラクとアフガニスタンの戦争で懲りた米国人はオバマに外交で影響力を発揮することを望んでいない。知人の米国人ジャーナリストはこう言う。「世論調査では、米国民の38%が“米国は国際情勢に関与すべきではない”と答えている。第二次世界大戦以降、最低の数字だよ」
ウクライナ、エジプト、タイが世界を劇的に変える
米国の影響力低下をふまえて今の世界を見ると、おおよその全体像を把握できる。注目すべきはウクライナ、エジプト、タイだ。この3カ国が世界を大きく変える舞台になるかもしれない。そして、そのカギを握るのは、米国、中国、ロシアだ。
ロシアは2014年3月、ウクライナ南部のクリミアを併合した。これはウクライナで親ロシア大統領が失脚させられたことに端を発する騒動だが、その後も東部ドネツクなどで混乱が続いている。
これは、米国が欧州諸国を反ロシア勢力として団結させられないことが大きい。オバマが欧州を動かせない理由は、欧州諸国のエネルギーがロシアのガスに大きく依存していること、そしてNSA(国家安全保障局)が欧州の首脳に盗聴を仕掛けていたことが、バレた失態もある。
米国の“弱体化”を分かっているロシアは、ウクライナに続いてアジア情勢にも顔を出す。オバマ米大統領のアジア歴訪を牽制してか、ロシアは中国と原油やガス供給に関する大型契約を結ぶなど、中国との関係強化をアピールして欧米をけん制している。
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