『窓ぎわのトットちゃん』が救った電車たち:杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)
長野県の安曇野ちひろ公園で、かつて長野電鉄で活躍した電車2両が保存展示されるという。よいニュースだ。しかし他の保存車両たちは、朽ち果てる運命のようだ。もちろんなんでも保存していけばキリがない。とはいえ、観光資源として生かす方法を検討していただきたい。
廃止路線に隔離された保存車両たち
「トットちゃんの広場」と「電車の教室の再現」は興味深く、ぜひ行ってみたいと思っている。しかし、報道に一つ気になる記述があった。譲渡される予定の電車は「長野電鉄旧屋代線信濃川田駅」にあると書かれていた。私の記憶では、長野電鉄の保存車両は、長野電鉄本線(長野線)の小布施駅構内「ながでん電車の広場」に留置されていたはずだ。私は2008年に見学していた。
ところが、長野電鉄に問い合わせると確かに報道の通りだった。2014年現在、古い保存車両は信濃川田駅にあるという。「ながでん電車の広場」には現在、2012年6月に引退した特急電車「2000系」が展示されている。この展示は2012年3月の引退後すぐに実施されたようだ。もともと展示されていた古い電車は2000系に場所を空けるため、2012年3月までに屋代線の信濃川田駅に移された。そして屋代線は同年3月31日の運行を最後に廃止された。古い電車たちにとっては片道切符の旅であった。もう営業路線に戻れない。
長野電鉄屋代線については、長野電鉄が駅や線路などの施設用地をすべて沿線自治体に無償譲渡する意向だった。信濃毎日新聞によると、2012年10月から駅舎や線路、踏切の撤去工事に着手していた。また、同年12月ごろに自治体が無償譲渡を受け入れる方針と報じられていた。その後の進展は追っていなかった。もし自治体が屋代線の施設を譲受しているなら、古い保存車両たちも「撤去」され更地になってしまったか。それは長野電鉄の一時代を担った車両たちに対して残念な成り行きである。
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