売春、密輸、麻薬――“アングラ経済”で世界のGDPランキングが変わる(かも):伊吹太歩の時事日想(2/3 ページ)
欧州でGDPの算出方法が変わろうとしている。売春や麻薬といった違法な経済活動で発生したカネもGDPに含めるという。こういった“アングラ経済”は私たちが思っているよりも規模が大きく、各国のGDPが一変する可能性があるのだ。
アングラ経済が加わると、GDPが大きく伸びる
そして今、イタリアや英国の政府が相次いで「地下経済もGDPに算定する」と発表し、欧米メディアがひんぱんに取り上げている。算定方法を変えることで、両国のGDPが急増することになるというのだ。
欧州債務危機で大打撃を受けたイタリアは最近、改革派の若きマッテオ・レンツィ氏が首相に就任したばかりだが、イタリアの地下経済は、現在のGDPのうち約17%に相当するといわれる。売春や麻薬取引といった地下経済の一部が含まれるだけでも、イタリアのGDPは2%ほど増加すると見込まれている。
英国は現在、酒類とたばこの密輸についてはGDPに加算しているが、9月以降は、売春や麻薬製造(消費)についてもGDPに含める。英国家統計局によれば、これにより現在のGDPに167億ドル(日本円換算で約1兆7000億円、2014年6月現在)が加算されるという。統計局のアドバイザーは、経済が進化していく中で統計方法も進化しないといけない、と意気込む。
フランスのGDPも、地下経済を含めると3.2%増加するとみられる。GDPの算出方法が変わることで、EU加盟国の平均GDPは2.4%も増加すると、EU統計局は予想している。
今までも「国の経済規模を表す指標に、地下経済が含まれないのは実態を反映していない」という意見はあった。世界銀行によれば、世界中で賄賂に使われるカネは年間100兆円に達するというし、OECD(経済協力開発機構)は汚職行為で動くカネは世界全体のGDP合計の5%にもなると指摘している。
それだけではない。国連の薬物犯罪事務局(UNODC)が2013年に公表した試算では、世界の違法犯罪行為による経済活動の規模は、870億ドル(日本円換算で約8兆8700億円)。これは世界全体のGDPの1.5%ほどだ。こうした活動を含めずに経済の動きを把握しても、現実を反映していないというのは一理ある。
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