「海外赴任」で思い浮かべるのは、どの国? どの都市?:博報堂生活総研・吉川昌孝の「常識の変わり目」(1/2 ページ)
「昔はこうだったのに」──。これまでの常識とは違うことが常識になりつつあると感じる事象はありませんか。データで読み解くと、常識の変わり目が見えてきます。今回は「海外赴任の変わり目」を取り上げます。
博報堂生活総研・吉川昌孝の「常識の変わり目」
30年以上にわたり生活者を研究し続けてきた「博報堂生活総合研究所(生活総研)」。同研究所の主席研究員である吉川昌孝氏が、さまざまなデータを独自の視点で分析し「常識の変わり目」を可視化していくコラムです。世の中の変化をつかみたいビジネスパーソンに新たなモノの見方を提供します。
著者プロフィール:吉川昌孝
博報堂生活総合研究所主席研究員。1965年愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒。著書に『亞州未来図2010−4つのシナリオ−』(阪急コミュニケーションズ・共著)、『〜あふれる情報からアイデアを生み出す〜「ものさし」のつくり方』(日本実業出版社)などがある
地域別、国別、都市別など、海外に居住する日本人の数を調査する、外務省の「海外在留邦人数調査統計」をご存じでしょうか。在留している国から永住を認められている「永住者」と、長期出張や転勤、就職などで3カ月以上居住している「長期滞在者」の2分類で集計されている調査リポートです。
最新の海外在留邦人数調査統計(平成25年要約版 2012年10月1日現在)によると、「永住者」は1996年の27万1035人から、41万1859人と1.5倍に伸び、「長期滞在者」も同49万2942人から、83万7718人と約1.7倍に伸びています。短期の出張や旅行などを除く、仕事に関連する滞在が主と考えられる長期滞在者数の都市別推移から、日本のビジネスのグローバル化に関する「常識の変わり目」が見つかりました。
今回は、直近の長期滞在者数トップ10の都市の中から、北米(ニューヨーク、ロサンゼルス)、東アジア(上海、北京、香港)、東南アジア(バンコク、シンガポール)の3地域7都市をグラフ化しました。
一番のエポック(常識の変わり目)は、2007年。これまでずっとトップを走ってきたニューヨークを抜いて、上海が長期滞在在留邦人数ナンバーワンの座についたことでしょう。そう言えば当時、上海駐在員事務所開設のお知らせをたくさんもらったことを思い出しました。
21世紀に入ってからの上海の上昇カーブはひときわ目を引きます。2001年は1万109人でしたが、2年後の2003年には一気に倍以上の2万3518人になりました。この差を日数で割ってみると、この2年間は一日平均で約18人の日本人が上海に滞在し始めたことになります。上海はこの勢いのままバンコクとシンガポールをあっと言う間に抜き去り、次年の2004年には香港とロスも抜いて第2位へ浮上しました。もう上にはニューヨークしかありません。
そして2007年、上海がトップに立ったのです。2012年には約5万7000人と6万人に迫る勢い。このように、ここまで順調に伸長してきた上海なのですが……。
関連記事
- 博報堂生活総研・吉川昌孝の「常識の変わり目」:「少子化」を子どもの目から見てみると……
「昔はこうだったのに」──。これまでの常識とは違うことが常識になりつつあると感じる事象はありませんか。データで読み解くと、常識の変わり目が見えてきます。連載1回目の今回は「少子化の変わり目」を取り上げます。 - 海外赴任経験者、6割が「帰任後の自分について不安に思ったことがある」
ビジネスパーソンにとっては栄転、出世の階段の1つとされることも多い海外赴任。しかし、「赴任中に帰任後の自分について不安に思ったことがある」という人は63.8%と半数を超えた。産業能率大学調べ。 - 転職先に海外勤務の可能性、あなたならどうする?
転職先を選ぶ際に、海外勤務の可能性の有無はどのような影響があるのか? 若手ビジネスパーソンは「自分の成長にプラスになる」と考えている。エン・ジャパン調べ。 - 海外送金の手数料にも“価格破壊”の波……ファミマが業界初のサービス
ファミリーマートは業界初の海外送金サービスを開始した。店内にあるマルチメディア端末「Famiポート」を使えば、海外送金が“より安く、より速く”できるようになった。 - 夫の海外赴任、「一緒に行きたくない」妻が過半数
グローバル化が進む日本経済。豊富な需要を求めて、海外でビジネスを行う企業が増えている。ビジネスを円滑に行うためには現地に社員を常駐させることも大事だが、妻は海外赴任が決まった夫に付いていきたいと思っているのだろうか。 - 「海外赴任イヤです!」止まらぬビジネスのグローバル化、新人のドメスティック化
企業と新入社員の思惑の隔たりは広がっているようだ。日本能率協会の2014年度入社新入社員への意識調査によると「海外赴任はしたくない」と回答した新入社員の比率は57.7%となり、2年連続の増加となった。 - 博報堂・吉川昌孝のデータで読み解く日本人:オリンピックがもっと楽しくなる? こんなにあった「スポーツの男女差」
ソチ冬季オリンピックが開幕しましたが、みなさんは「スポーツする派」「みる派」どちらでしょうか? 今回のコラムは、やるかやらないかとはちょっと違う、男女差という観点から、スポーツ意識やその行動の傾向を明らかにしました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.