世界一になるとはどういうことか――答えは、まだ出ていない:上阪徹が探る、リクルートのリアル(3/4 ページ)
幅広い領域で次々とビジネスを拡大しているリクルート。中長期戦略の柱は「グローバル化」と「IT化」だが、具体的にどんなことを行っているのだろうか。37歳の若さで経営企画室長に抜てきされた今村健一氏に話を聞いた。
グローバル ナンバーワンを目指す
室長になって以後、経営企画では、中長期戦略、IT、分社化という大きく3つのキーワードで動いていったと語る。
「中長期戦略の柱は、グローバル化とIT化です。まだ全社に占める割合は国内売り上げが大半ですから、基本戦略を海外M&Aに据えて、どの領域を、どう伸ばしていくか、どのくらいの投資をするのか、ということを社長以下、役員でディスカッションして、目指したい姿を描いていました。「グローバル ナンバーワン」とはどういうことか、そこへ向けて我々は何を強みとするのか、なんて議論を、1年かけてやっていましたね」
同時に取り組んでいたのが、経営理念の再編成だ。リクルートはこれまで、リクルート事件があったときに、一度だけ経営理念を見直している。分社化にあたり、二度目の見直しを行い、執行役員以下、全員で何度もディスカッションを繰り返したという。最終的に、経営理念はほとんど変わらなかった。
「ものすごい時間をかけたんですけどね。でも、これは重要なんだな、というのを改めて再確認できたのは大きかった。新しい価値を創造し続けるんだ、社会に貢献するんだ、そのときに個を尊重するんだ、という3つの柱が、グローバル化してもIT化しても根っことしては重要だということを確認できましたから」
2つ目のキーワード、ITは、採用、育成、組織づくり、権限委譲、新規事業の制度などですべて意識し、強化した。新卒のエンジニア採用数を拡大、中途採用も増やし、エンジニアをはじめとしたIT・ネット系人材を1000人規模にする計画を作った。
「率直に世界一を目指していますから、グローバルなIT企業は完全にライバルになります。まずは、あの世界的企業で働くよりもリクルートで働いてみたい、と日本だけでなく世界中の優秀なエンジニアが思ってくれるような会社にしないといけないと思っています」
さらに3つ目のキーワード、分社化では、求心力のコントロールに留意した。そもそも分社化の目的はスピーディな意思決定。成長のスピードアップと競争力向上のために、実は昔から何度か議論されていたことだった。
「独立経営は放って置いてもおそらくうまくいくと思います。一方で経営企画の立場で考えなければいけないのは、総合力をどう形作っていくか、です。それを維持する仕掛けはやっていかないといけない」
例えば、グループエグゼクティブのカンファレンスが大きな取り組みの1つだ。
「年2回、海外駐在の人も集めて、グループの目指す方針をはじめ、エンジニアの働きやすい環境づくりなどの重要なイシューについて、ディスカッションする場のプラニングを行っています。またグループエグゼクティブの人事権はホールディングスが持っていますので、人事と連携して、全社の方針のもと最適なフォーメーションを考えることも重要な役割だと思っています」
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