世界遺産の富岡製糸場には、鉄道で、しかも「上信電鉄」で行くべきだ:杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)
「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録が決まった。ただ、いくつか課題はある。ぜひ鉄道で、しかも「上信電鉄」でと勧めたい理由は何か。鉄道とバスを連携させた周遊ルートの整備を急ぐべき理由も考察した。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
6月23日月曜日、都内のJR東日本の駅で「技術大国、日本の原点へ」と題したポスターを見た。世界文化遺産となった群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」への旅を誘う内容だ。東京から新幹線、あるいは新宿から湘南新宿ラインで高崎へ、高崎から上信電鉄で上州富岡駅へというルートを示す。ユネスコ(国連教育科学文化機関)が世界文化遺産登録を決定した日はこの2日前。JR東日本は仕事が早いなあ、と思ったけれど、「世界遺産登録へ」という文字もあったから、これは暫定リスト入りの時に作られたらしい。
しかし、その23日中にJR東日本は新たなプレスリリースを発表した。『祝 世界遺産! 富岡製糸場と絹産業遺産群 古きを知る、新しきを乗る。新幹線で富岡製糸場へ行こう!』(関連リンク参照)というタイトルだ。すでにポスターのデザインやキャンペーン用のロゴマークもできあがっている。やっぱりJR東日本は仕事が早い。もっとも、万が一世界遺産に登録されなくても、暫定リスト入りだけでも価値がある。その時の再利用方法も用意していたかもしれない。
世界遺産といえば、2013年に富士山が登録された時は地元の富士急行が活気づいた。かつて何度か構想された富士山5合目までの鉄道新線計画を立ち上げた(関連記事参照)。その後の進展は報じられていないから、実現は難しいかもしれない。しかし、こういう話は絶えず声を上げたほうがいい。夢がある。街も人も活気づく。賛成派も反対派も勢いがつき、総じてこの地域が注目され、盛り上がる。
JR東日本も富士山観光に力を入れている。この夏は成田エクスプレスを富士急行線に直通させる(関連リンク参照)。世界遺産登録以降、海外からの観光客増加をにらんだ施策だ。千葉、東京からの富士山観光客にも便利な列車だ。
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