リクルートの最年少役員が語る、求人サイト「indeed」買収の舞台裏:最終回・上阪徹が探る、リクルートのリアル(4/6 ページ)
外資系企業とのM&Aは難しいと言われているが、なぜリクルートは米国で生まれた世界最大の求人サイト「indeed」の買収に成功したのか。M&Aを仕掛けたのは、リクルートホールディングスの最年少執行役員・出木場久征氏。彼に当時の話を振り返ってもらった。
M&Aがうまくいった理由
では、その難易度の高いM&Aがうまくいっている理由とは何か。
「ひとつは1人で行ったことでしょうね。当時の本社はコネチカット、開発拠点はオースティンにあり、コネチカットにはリクルートから2人行っていますが、オースティンは僕1人。だから、何かしてやるぞ、というより、何の手助けができるかな、という感じなんです。そもそも、素晴らしいエグゼキューション(M&Aにおける事務手続きなどの管理をすること)をしていますから、僕が何か言ったりリクルート流を押し付ける必要もない」
ただ、リクルートとはどういう会社なのか、改めて自分で考えることにはなったという。
「結局、いろんな社員のやりたいという気持ちを、純粋に『じゃあ、やってみろ』と言って応援してくれる会社だと思ったんです。だから、DNAの進化と同じで、方向性って、実はない。360度全方位で何だってやれる。そういう文化なんだと思う。逆にいえば、やりたいことこそが大事なんです。僕自身も、indeedのゴールをどう支援できるか、いつも考えているので、受け入れてもらえているのかな、と思いますね」
事前に先輩にアドバイスを受けた、オペレーションにあまり口出しをしない、という精神も貫く。欧州にも拠点があるが、彼らには彼らのやり方がある。できることは、トップを任命すること。あとは応援するしかない。
「運の要素も大きいと思いますよ。そういうカルチャーを持った会社と出会えた。みんなオーナーシップを持っているから、楽しくやれる。僕も誰かに『やれ』と言われるのが嫌いですから、僕も言わない。僕もやりたいことをやっているだけですから」
そしてindeedに来て、強烈な体験を改めてすることになったという。優れたエンジニアたちの、驚くほどの頭の良さだ。
「気持ちいいくらいに能力は違いますね、自分が残念になるくらい(笑)。だから、どうやったら彼らを支援できるのか、を自然に考えるようになりました。彼らは人類の宝なんです。彼らがすばらしい仕事をすると、世界はイノベーションされるんです。世界は新しくなる。僕が一生懸命やったって何もイノベーションされない。圧倒的に僕よりも価値が高いんです。」
だから、その宝が最も発揮できる環境を整備することが重要になる。
「それも僕の仕事です。最高の仕事ができるようにしてあげないと。僕が何かしても、世の中、変わりませんから(笑)」
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