ミドリムシがクルマを走らせる? “夢の燃料”ができる日:仕事をしたら“軽油”ができそう(前編)(2/6 ページ)
いすゞ自動車とユーグレナが共同で、次世代の燃料開発を始めるという。ミドリムシの油を使ってクルマを動かすということだが、どのような研究を行うのだろうか。ユーグレナでミドリムシのことを研究している鈴木健吾さんに話をうかがった。
「ミドリムシ100%」の燃料
土肥: 「食糧、栄養、地球温暖化、エネルギー。これらの問題は『ミドリムシ』が解決する」――。これをモットーに、ユーグレナは2005年に創業されました。ミドリムシのことをよく知らない人は、「この会社って怪しいなあ」と思われるかもしれませんが、これまでの実績をみると、いろいろなことをされてきたんですよね。
ミドリムシにはたくさんの栄養素が詰まっているので、それをクッキーにしたり、ラーメンにしたり、緑汁にしたり。そして、食糧問題に苦しんでいる人たちをなんとか救おうと、さまざまな活動をされている。
その一方で、ミドリムシの体内に詰まっている油にも注目されました。振動や超音波を使って、ミドリムシをビリビリと破ると、体内にある油がプカプカと浮かんでくるそうで。その油が今ではシャトルバスの燃料にも使われているんですよね※。
こんな話を紹介すると、読者の中には「おー、スゴい!」と思われる人もいるかもしれませんが、実はまだまだ。石油から精製されている軽油の中に、ミドリムシから作られた油は1%しか含まれていません。つまり、今は“試運転”のような状況で、今後はいすゞ自動車と共同で、「ミドリム100%」の燃料を作ろうとしています。
「共同研究を行いますー。“夢の燃料”ができるまで、がんばりますー」という発表会に、ワタクシもお邪魔したのですが、疑問に感じたことがあるんですよ。それは、ミドリムシは100種類ほどあるのに、その中のどういったタイプのモノを使って燃料を作ろうとしているのか。体内に油を作るのが得意……というか、人間でいうとメタボ体質なモノがいるのでしょうか?
鈴木: 下の写真を見ていただけますか? ミドリムシに蛍光物質を浸透させると、油の部分だけが光るんですよ。研究をする際には、油の生産が得意なミドリムシを選んでいますが、たくさん光合成をさせると、基本的には油を蓄えるんですよ。
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