ミドリムシがクルマを走らせる? “夢の燃料”ができる日:仕事をしたら“軽油”ができそう(前編)(3/6 ページ)
いすゞ自動車とユーグレナが共同で、次世代の燃料開発を始めるという。ミドリムシの油を使ってクルマを動かすということだが、どのような研究を行うのだろうか。ユーグレナでミドリムシのことを研究している鈴木健吾さんに話をうかがった。
燃料に向いているミドリムシ
土肥: カロリーの高いモノばかり食べている人は、ぶくぶくと太っていく……といった感じですか?
鈴木: ですね。油を蓄えるのが得意なミドリムシ、苦手なミドリムシが存在しますが、それよりも私が注目しているのは「増え方」なんですよ。
土肥: 増え方? どういうことでしょうか?
鈴木: 自分のクローンをどんどん増やしていくのが得意なミドリムシがいるんですよね。例えば、体内に3割の油を蓄えることができるミドリムシでも、1週間で2個になるタイプ、1週間で1000個になるタイプがいる。この2つを比べると、生産性が500倍も違いますよね。
つまり、油を蓄えるのが得意+自分のクローンを増やすのが得意――そんなミドリムシのことを研究しています。
土肥: クルマを走らせるためには、優秀なミドリムシが大量に必要になってくるわけですよね。人間の世界をみると、多くの親は「自分の子どもは優秀になってほしい」と願っています。でも、現実はなかなかそうはいきません(涙)。そう考えると、優秀なミドリムシを増やすのは、かなり難しいのではないでしょうか?
鈴木: いえ、そんなことはありません。というのも、ミドリムシはクローンだから。1つが2つになり、2つが4つになり……といった感じで、細胞分裂を繰り返していって、どんどん増えていく。オス・メスの区別がなく、親子の概念もない。たくさん増えてくると、あれ? どれが元の細胞だったっけ? といった感じになるんですよ。
土肥: ほほー。映画やドラマなどで、人間のクローンが登場することがありますが、だいたい恐ろしい結末が待っていますよね。世界が滅亡するような感じで。また、欧米諸国はクローン人間の作る目的の研究を禁止・延期していますが、ミドリムシはそもそもクローンなので、燃料に適したタイプのモノをどんどん増やすことができるわけですね。
鈴木: ですね。
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