ミドリムシがクルマを走らせる? “夢の燃料”ができる日:仕事をしたら“軽油”ができそう(前編)(4/6 ページ)
いすゞ自動車とユーグレナが共同で、次世代の燃料開発を始めるという。ミドリムシの油を使ってクルマを動かすということだが、どのような研究を行うのだろうか。ユーグレナでミドリムシのことを研究している鈴木健吾さんに話をうかがった。
同じモノを作ることが大変
土肥: ミドリムシの油を使って、シャトルバスが運行されていますよね。石油から精製された軽油の中にちょっとだけ混ぜている段階なのですが、この油を開発するにあたってはどのような苦労があったのでしょうか?
鈴木: バイオディーゼル燃料は、いろいろなモノから作ることができるんですよ。大豆、菜種、パーム、廃食油などの油から作ることができ、これらの実例……いわば“教科書”を見れば、ミドリムシの油から燃料を作ることができることは分かっていました。
ただ、理屈ではできる、ということが分かっていても、過去に誰も作ったことがありません。実際に“教科書”を見ながら作ってみたのですが、ミドリムシの油にはある特徴がありました。なので、その加工に手間がかかりましたね。
土肥: どんな特徴で、どのように加工されたのでしょうか?
鈴木: うっ……そこは企業秘密なので、ご勘弁を。
土肥: (しつこく)クスリを開発するのは、化合物と化合物を組み合わせるそうなんですよ(関連記事)。ある人は「カギ穴があって、それに合うカギを作る作業に似ている」と話されていました。そのカギを作る作業は何万通りもあって、優秀な研究者はそのカギを作るのがものすごく速いそうです。ミドリムシを原料にした燃料を作るときにも、クスリを開発するようなものですか?
鈴木: うーん……。大きなカギ穴に合うカギを作るのは難しくありませんよね。ミドリムシを原料に燃料を作るのは、クスリの開発と違って、ものすごく大きなカギ穴をイメージしてください。つまり、技術的にはそれほど難しいことではありません。むしろ、今回の研究では、カギを作ることよりも、同じカギをいくつも作ることが難しかったですね。
土肥: ということは、ゼロからイチを作ることはそれほど難しくなかった。しかし、同じイチを増やしていく作業が大変だったということですね。
鈴木: はい。
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