ミドリムシがクルマを走らせる? “夢の燃料”ができる日:仕事をしたら“軽油”ができそう(前編)(5/6 ページ)
いすゞ自動車とユーグレナが共同で、次世代の燃料開発を始めるという。ミドリムシの油を使ってクルマを動かすということだが、どのような研究を行うのだろうか。ユーグレナでミドリムシのことを研究している鈴木健吾さんに話をうかがった。
ミドリムシは“社長になれる”
土肥: いすゞ自動車と共同で開発される燃料は、従来のモノとはかなり違うそうですね。
鈴木: シャトルバスに使っている燃料は、市販されている軽油に似ていますが、違うモノなんですよ。でも、これから研究を始めるモノは、軽油と全く同じなので、技術的なハードルがかなり高くなりますね。
これまで、ミドリムシの油を100%使って、クルマを動かした人はいません。ただ、仮説はありますので、その検証を始めなければいけません。
土肥: その仮説というのは、“教科書”に掲載されているのですか?
鈴木: ミドリムシの油がどんなモノなのかは分かっています。ただ、それを「加工した」という報告例はないので、“教科書”を参考にしたらすぐにできる……といった話ではありません。トライ&エラーを重ねながらの研究になりますね。
土肥: 市販されている軽油と同じモノを作る、ということですが、もう少し詳しく教えてください。
鈴木: 分子構造が同じ、ということですね。
土肥: 分子構造を同じにするためには、どのような研究をされるのでしょうか? 例えば、試験管の中にミドリムシを入れて、その中に何やら違うモノを入れて、ガーッとかき混ぜるといった感じ?
鈴木: ミドリムシの油を使って、このような工程を踏めば、同じ分子構造の燃料ができる、ということは分かっているんですよ。「軽油=社長」だとすると、“社長になれる”ことは間違いない。ただ、どうすれば“社長になれる”かが分かっていません。部長→常務→専務→社長といった流れなのか、部長→副社長→社長といった流れかもしれません。このルートをこれから探っていく、といった感じですね。
社長になるルートはいろいろあるのですが、その中で最も効率的なものを見つけなければいけません。でなければ、実用化できないんですよね。
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