日本に「集団的自衛権」が必要なワケ:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
集団的自衛権の行使容認を閣議決定された。賛否が分かれるテーマだが、戦争のリスクが高まっている今の時代では必要なことだと藤田氏は述べる。その理由は……?
集団的自衛権の“意志表明”こそが重要
こうした国際的なルールの目的は、“事故”によって国が戦争に巻き込まれることをなくすことだ。どの国も偶発的に戦争になるのが最も困る。そういうリスクを避けるために、各国の軍同士はホットラインを設けているが、日中間ではこのホットライン設置も滞っている。
中国軍のパイロットや艦長がこうしたルールを知らないとなると、これは大問題だ。ある意味で、共通言語がないと言っていい。言語が通じなければ、自衛隊が攻撃を仕掛けることはなくても、自衛隊が偶発的に攻撃を受けるリスクは格段に高まる。組織全体として冒険主義を慎む姿勢であっても、現場がそれを無視するかもしれない。攻撃を受ければ反撃の必要が出てくるかもしれないし、攻撃を受けて犠牲者が出れば、日本国内の世論が逆上する可能性だってある。
そういう状況下で最も重要なのは、相手を“その気”にさせないことだ。相手が感情的になるような行動は、もちろん慎まなければならない。それと同時に、十分な備えをすることで「手を出したら火傷する」と思わせることである。
だから米国は中国に対して、尖閣諸島は日米安保第5条の適用対象であると明言しているのだ。実際に米軍が無人島を守るために出動するかどうかが問題ではない。その姿勢、「構え」が大事なのだと思う。その意味では、米国と軍事同盟を結んでいる日本が、集団的自衛権を行使できると意思表明するだけで「抑止」につながると期待できる。
それが“戦争に巻き込まれる”ことにつながるかどうかは別問題だ。これは時の内閣や国会の判断によるだろう。そして、その国会議員を選ぶのはわれわれ国民自身――という意識をわれわれは持っているだろうか。
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