なぜ巨人の原監督は“プラス思考”でいられるのか:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)
なんだかんだと言われながら、やっぱり今年の巨人は強い。常勝軍団の指揮官を務める原監督は、各方面から叩かれてきたが、なぜ“プラス思考”でいられるのか。その理由は……。
「原辰徳物語」をオンエア
どうしてそういう考えになったのかと言うと、つい先日、原監督がブラジルで行われたサッカーW杯1次リーグでコロンビアに敗れて決勝トーナメント進出を逃したサッカー日本代表にこう苦言を呈したからだった。
「残念なのは分かるよ。応援していたオレや日本のファンが悔しいんだから、ブラジルのピッチにいた彼らは胸が張り裂けてしまいそうなぐらいに無念な気持ちでいっぱいになっているはず。でも負けた途端に、この世の終わりみたいになって暗くなっていてはいけない。前を向かなきゃ。この悔しさを次に晴らさなきゃ。(4年後の)ロシア大会へ向けてドラマはまだまだ続くんだぜ。そう思えば、絶対に下を向いているヒマなんてない。トゥ・ビー・コンティニュー(続く)ってヤツよ」
なぜか最後のところで英単語を用いたのはいつも通りの独特の言い回しであったが、この時にハッとさせられたのは「ドラマ」というフレーズ。以前にも原監督本人から、そのフレーズを直接耳にしたことがあったからである。
あれは2008年秋の日本シリーズが終わった数日後。同シリーズ第7戦の試合終盤で対戦相手の西武ライオンズに逆転されてゲームを落とした。日本一達成を逃した直後だっただけにさぞかしショックが残っているだろうと思いきや、都内の某所で1対1の取材に応じた原監督の目は爛々(らんらん)と輝いていた。憔悴(しょうすい)しているどころか、なんだか楽しそうにも見えたほどだ。
「さあ、来年! 日本一奪回というテーマに向かって今はやってやろうという気持ち。この悔しさは必ず晴らしてやりますよ」と異様なまでにテンションを上げまくる指揮官に対して「どうして監督は、それほどまでにいつも前向きになれるのですか」と単刀直入に質問をぶつけてみた。すると原監督は「いいことを1つ教えてやろうか」と前置きし、こう答えたのである。
「ツラい時は自分をテレビドラマの主人公に置きかえるんだよ。いま、こういう苦しい状況に置かれているのは、自分という主人公がテレビドラマのストーリーの中でピンチに立たされているシーンなんだと……。主人公が成長するため、乗り越えなければいけない試練を与えられたんだと……。ドラマというものはたいていハッピーエンドになるわけだから、それを乗り越えるシーンがこの後にきっとやってくる。そう考えれば、どんな過酷でキツイことだって『ああ、これは主役が苦悩している場面なんだな』と思えて気持ちはスッと楽になる。だからオレは昔からずっと前向きでいられるんだ」
つまり、どうしようもなく窮地に追い詰められた時、自らの頭の中でテレビドラマ「原辰徳物語」を“オンエア”させ、その主役にサッと成りきってしまうというのである。そうすることで客観的に自分を冷静に見つめ直すことができて本人曰く「その後の形勢の立て直しも非常にうまくいくケースが多い」というのだ。
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