体長0.05ミリの生物は次に何を動かす? ミドリムシが創る「未来」:仕事をしたら“軽油”ができそう(後編)(2/5 ページ)
2020年――。ミドリムシが飛行機を飛ばすのが、当たり前になっているかもしれない。体長0.05ミリの生物がどのようにして飛行機を飛ばすのか。ミドリムシの大量培養に成功した、ユーグレナの研究者に話を聞いた。
ユーグレナの脅威
土肥: ガソリンスタンドに「軽油(ミドリムシ産)」といった看板ができるのは、いつごろになりそうですか?
鈴木: 2020年以降に、徐々に増えていけばうれしいですね。
土肥: 日本で使われている軽油って、どのくらいの量なのかなと思って調べたところ、経済産業省によると2011年には3286億6000キロリットル使われているんですよ。数字だけ見てもちょっとイメージが難しいのですが、ミドリムシ産の軽油でそれをまかなうのは可能でしょうか? 大量のミドリムシが必要になりますよね。
鈴木: 次世代燃料の開発とともに、大量に増やす技術も開発しなければいけません。なるべく広い土地で、安定的に安くミドリムシを増やしていく……そういった技術が必要になってきます。
土肥: ミドリムシの培養はできるだけ暖かいところがいいんですよね。現在は石垣島にプールを造って、そこで増やされているようですが、需要が増えてくると、今後は海外にプールを造ることも考えられますか?
鈴木: その可能性はありますね。
土肥: 少し話は変わりますが、ミドリムシを大量に増やしているのは、ユーグレナだけなんですよね。どこかの会社が知らないところで作っているかもしれませんが、いまのところ報告例はありません。つまり、ミドリムシを増やしてそこから油を作る、という技術については独走状態なわけですよ。競合他社がいない状況で、何かにおびえることってあるのでしょうか?
鈴木: 同じ場所を使って、同じ施設を使って、ミドリムシよりもいい油ができましたよ、となったとき淘汰されるかもしれません。
前回もご紹介しましたが、油を作る方法ってたくさんあるんですよ。バイオディーゼル燃料の原料をみると、パーム、菜種、大豆、廃食油などがありますが、この仕事をしている限り、ミドリムシのほうがなぜいいのか? ということをずっと問われ続けるでしょう。そして「他の原料に比べて、ミドリムシのほうがいい」と言い切れるようにしなければいけません。
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