体長0.05ミリの生物は次に何を動かす? ミドリムシが創る「未来」:仕事をしたら“軽油”ができそう(後編)(5/5 ページ)
2020年――。ミドリムシが飛行機を飛ばすのが、当たり前になっているかもしれない。体長0.05ミリの生物がどのようにして飛行機を飛ばすのか。ミドリムシの大量培養に成功した、ユーグレナの研究者に話を聞いた。
ユーグレナの研究者あるある
土肥: ユーグレナの研究者あるあるってありますか?
鈴木: 出張や旅行に行ったら、必ず現地の水をくんで持って帰りますね。例えば、池の水とか。なぜ持って帰るかというと、新種のミドリムシがいるかもしれないから。旅行から帰って家に着くと、荷物を整理する人が多いと思うのですが、ユーグレナの研究者はまず持ち帰った水を調べるんですよね。
何度も水を持ち帰っていると、“目利き”ができるようになってきました。水の淀み具合や温度などで、「ここの水にはたくさんのミドリムシがいるだろうなあ」といった感じで、だいたい当てることができますね。
土肥: どんな条件の水にミドリムシが多いのですか?
鈴木: 炭酸がわき出ているところは、新種がいるのではないかと期待しますね。水温が高いところとか塩の濃度が変わるところとか(海水と川の水が混ざるところ)。あと、現地の水を見て、ここにはこのタイプのミドリムシがいるのでは? と予測できるようになりました。実際に持って帰って調べると、「やっぱりね」と思うことが多いですね。
土肥: 他人に自慢できるミドリムシを見つけたことってありますか?
鈴木: それについては、いずれ学会で発表する予定なので、いまは秘密。これまでたくさんのミドリムシをすくってきたので、「バリエーションが増えている」というコメントでご勘弁ください。
あと、研究者あるあるですが、疲れてときにミドリムシを見ちゃうんですよ。
土肥: 鈴木さんの仕事って、ミドリムシを見ることですよね。疲れたときって、仕事に関係することから離れたくなるのでは?
鈴木: ミドリムシの“すじりもじり運動”はかわいいので、いやされるんですよ。仕事が煮詰まってきたなあ、と感じたときには、ミドリムシを見る。顕微鏡でミドリムシの動きをみると、「やっぱり、こうした動きだよな」と感じることで、原点に立ち返れるのかもしれません。うまく言えませんが、頭の中が整理されて、スッキリするんですよね。
土肥: なるほど。ミドリムシをたくさん増やすことで、世の中がどのように変わっていくのか。楽しみにしています。本日はありがとうございました。
(終わり)
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