女性器の3Dデータを配って逮捕、“ろくでなし子騒動”を世界はどう見たか:伊吹太歩の時事日想(2/3 ページ)
3Dプリンタで女性器の造形を出力できるデータを頒布したとして、逮捕された漫画家「ろくでなし子」。この一連のニュースは海外メディアも大きく取り上げている。読者のコメントを見てみると、日本について“誤解”している人がいかに多いかが分かる。
外国人が日本について“言いたいこと”
まず、どのサイトでも目立つのは「え!? 日本にワイセツの法律があるの?」という驚きの声だ。ガーディアン紙(参照リンク)では「『日本のワイセツ法』? ほんとか? 自動販売機で女子生徒のパンツを売っているあの日本で!?」とコメントした読者に、別の読者がこう反応している。「女子生徒のパンツを販売する自動販売機は、文化なんだよ……」。
このほかにも「奇妙な国だな。子供がレイプされるアニメは見せてもよくて、女性器はダメなんだな」というものや「いや、日本の当局は尽力して彼女を世界的な有名人にしたことはナイス」という皮肉もあった。
また、読者それぞれの主観で、とにかく日本について言いたいことにつなげてしまう人もいる。捕鯨に絡めて「ああ日本、性器についてアートを制作できない国、なのに絶滅危惧の鯨を保護水域や国際水域で虐殺するのは道徳的にまともだと考えている」といったものや、福島原発事故に絡めて「アートでもなんでもない……(彼女が制作していた女性器型のボートについて)彼女がボートで浮かんでいる水は恐らく放射能に汚染されているだろう」といったコメントもある。
こういった話だけに、コメントしている人たちは男性が多いようだ。だが、ロシア・トゥデイ(参照リンク)では女性と思われる読者も多くコメントしている。しかも彼女たちは「ろくでなし子」の活動に対してあまり好意的ではないようだ。
ある女性読者は感情的で辛辣だ。「かなり気持ちが悪い。なぜ彼女はレイプされて、その姿を自画撮りしないのか。こうしたバカげた行為によって、私たち女性は男性の尊敬を得られなくなる。それどころか、この行為がさらなるレイプや暴行を招く」。別の女性は「女性に対する侮辱だ」と書いている。プーチン政権批判のパフォーマンスをして拘束された女性ロックバンド「プッシーライオット」の事件など、女性が抑圧されているロシアだからこそ、こういうコメントが出てくるのかもしれない。
ロシアのように、それぞれの宗教や社会的背景によって、「ろくでなし子」のニュースに対する見方が変わるのは興味深い。米フォーリン・ポリシー紙のコメントには、イスラム教徒と思われる人からのコメントもある。「うーん、3Dの女性器はイスラムの世界では非常に危険なものだ……これはベールで覆っておくべきだ」。
一方で、おそらくイスラム国家または南アジアからだと思われる示唆に富んだコメントもあった。「他国の文化は尊重すればいいのでは? 日本人が名誉殺人をすることはないし、女性が運転することも禁止していないし、斬首もしないし(1945年以降だが)……日本は近代的で責任ある国になるために素晴らしくがんばってきたのだ」。
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