女性器の3Dデータを配って逮捕、“ろくでなし子騒動”を世界はどう見たか:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
3Dプリンタで女性器の造形を出力できるデータを頒布したとして、逮捕された漫画家「ろくでなし子」。この一連のニュースは海外メディアも大きく取り上げている。読者のコメントを見てみると、日本について“誤解”している人がいかに多いかが分かる。
偏った記事で、日本の文化を誤解している人も
一方でロシア・トゥデイの記事には、「近代日本は、米国化と米国的な『反男性(男性が作り上げている)』という文化が将来どうなるのか示した悲しい例である。日本文化のほとんどが『米国90%+日本10%』であり、みんな見て分かる通り、このニュースがまさにその結果である」といったコメントも寄せられている。
このように、そもそも日本の文化を誤解していると思える意見も少なくない。欧米では日本の“変なニュース”が取り上げられることが多く、そういう情報に触れて、偏ったイメージを抱いてしまっている人も少なくないからだ。
例えば「なんだか彼らは、昼間は抑圧され、夜になるとみんな変態になってしまい、使用済みの女子生徒の下着を手に入れたり……もっと深刻なことをするようだ」という意見もあったが、さすがに日本人すべてがそうだと思われてはたまったものではない。
こうした情報を世界に提供しているのは欧米メディアの東京在住「外国人特派員」だ。ただ、知り合いの東京特派員たちに話を聞くと、決まって「俺たちもそんな記事は書きたくない」という答えが返ってくる。
ある特派員はこう嘆いていた。「結局、日本関係の記事でアクセスがあるのは『日本って変な国だよな』という話。だから本土の編集者もそういう記事を求めてくる。読者が求めているから。本当はもっと世界的に意味のある記事を書きたいんだけどね……」。そのため、バブル崩壊以降、日本発のニュースは“変な日本人”をテーマにしたものが多くなったという。「日本は変な国」――残念ではあるが、これが今の日本に関する世界的な事実とも言える。
ちなみに、読者のコメントには日本人が読んでも一理あると思える意見もある。ある読者は「福島は今も被災地であり、後片付けはひどく失敗し、避難民は厳しい環境にいるが……ああそうだ、この逮捕は納税者のお金の有意義な使い方のようだね」と手厳しい。
ガーディアン紙にもこんなコメントがある。「日本から他には何も報じることがないというわけでもないだろう。安倍首相は日本が米国の戦争にさらに軍事的に貢献できるように憲法解釈を変えるのに忙しかったりするのに、ガーディアンが懸念するのはプラスチック製の女性器なのか」。
もっともなご意見だ。特派員たちもそう思っているかもしれない。だが、こんな立派なコメントをしているこの読者も、まんまと記事をクリックさせられてしまったに違いないのだが。
関連記事
- 3Dプリンタで性器の造形を出力できるデータ配布 漫画家「ろくでなし子」逮捕
3Dプリンタで女性器の造形を出力できるデータを頒布したとして、「ろくでなし子」の名前で活動している女性漫画家を警視庁が逮捕。 - 逮捕された女性漫画家の釈放求める署名活動始まる
3Dプリンタで女性器の造形を出力できるデータを頒布したとして逮捕された女性漫画家の釈放を求める署名が「change.org」で始まり、7000人近いの賛同者が集まっている。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……? - 米国では、女性の5人に1人がレイプに遭っているという事実
最近、米国では大学内でレイプ事件がまん延し、政府が対策を迫られるほどの社会問題に発展していることをご存じだろうか。もはや、世界中のどこにいても、レイプの危険性を頭の片隅に置いておくべきなのかもしれない。 - 子作りキャンペーンから精子の輸入まで――世界の少子化対策いろいろ
日本では少子高齢化による人口減少が大きな問題となっているが、少子化に悩む国は日本だけではない。海外では、政府ではなく企業が少子化対策に乗り出すユニークな例もあるので紹介しよう。 - 連載:伊吹太歩の時事日想 一覧
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.