USJで学ぶ、今さら聞けない「株式上場」の話:数字のオモテとウラを学ぶコラム(3/4 ページ)
USJを運営しているユー・エス・ジェイが、「株式の再上場を検討している」というニュースがありました。ユー・エス・ジェイはなぜ株式を再上場しようと考えているのでしょうか。「株式上場」の基本的な話を紹介しましょう。
上場を廃止する、ということもある
株式を上場するということは、基本的に「その会社の株式を買います!」と思ってくれる投資家が増えます。なので、よりたくさんのお金を集めて、経営を拡大したりするためには、株式上場はとてもいい選択肢と考えることもできます。
一方で、株式を自由に売り買いできるということは、ひとたび会社の経営が傾いたら、株主たちが一斉にその株式を手放そうとするかもしれません。このような時、その会社の株式の値段……つまり株価は大きく下落することになります。
もちろん、上手に経営を続けて成長を続けていけば、株価は安定して推移します。しかしそれでも、上場にデメリットがないわけではありません。先ほど説明した通り、上場会社には情報公開のルールが定められていたり、ガバナンスをしっかりとしなければいけないという規制がついて回るため、「株式を上場している」というだけで、多大なコストがかかってくるのです。
また、時には会社にとって好ましくない株主が現れることも。例えば、「敵対的な企業」などがそれにあたります。株式を過半数保有すれば、その会社を事実上支配することができるため、敵対的な企業による株式の取得には、会社は常に注意を払っています。
ユー・エス・ジェイが2009年に上場を廃止したのも、経営が不振に陥ったことに伴い、上場維持コストの負担を回避したい、「好ましくない投資家」による株式の取得を通じて、自身の支配力が低下するのを避けたいという思惑があったからではないかと思います。
上場廃止というのは「この株式はもう簡単に売り買いできなくなるよ」と宣言することですから、既存の株主から株式を買い集めなければいけません。ということは、必然的に多額の支出が必要になります。ユー・エス・ジェイの場合、先ほど紹介した有限会社クレインホールディングスが、株式の買い付けのための資金を負担しました。買い付けに要した費用は総額で約750億円とも言われています。
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