「戦力外」の足音は聞こえていない? 日本ハム・斎藤佑樹の不思議なチカラ:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(1/3 ページ)
かつて「ハンカチ王子」と呼ばれた、日本ハムの斎藤佑樹投手が785日ぶりに勝利した。突出した武器を持っていないのに、なぜ斉藤は現役を続けられているのか。それは……。
著者プロフィール:臼北信行
日本のプロ野球や米メジャーリーグを中心としたスポーツ界の裏ネタ取材を得意とするライター。WBCや五輪、サッカーW杯など数々の国際大会での取材経験も豊富。
佑ちゃん――。つい最近、各メディアで報じられた、その愛称を久しぶりに見聞きした人も多かったのでは。北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手が7月31日、QVCマリンフィールドでのロッテ戦に先発し、6回1失点で2012年6月6日の対広島戦以来、785日ぶりに勝利投手となった。試合後のヒーローインタビューでは目を潤ませながら「これから僕の第二の野球人生が始まりますので、一緒に頑張っていきましょう!」とややハイテンション気味に絶叫した。
しかし、そんな威勢のいい言葉とは対照的に、この日の投球は褒められた内容ではなかった。5度の得点機を許しながらも、許した得点はソロ本塁打1本のみ。要所を締めるピッチングだったと言えば聞こえはいいが、5つの四死球を与えるなど制球にバラつきがあったことを考えれば、ロッテ打線の拙攻によって助けられたと評したほうが妥当であろう。
とはいえ、この約2年2カ月ぶりの白星によって改めて斎藤は自身の持つ卓越した“ある能力”を球界内で知らしめた。投球術などのテクニックではない。彼の中に秘める独特の「超プラス思考」だ。入団当時から斎藤を間近で見ている日本ハムの球団幹部は、こう解説する。
「何か突出した武器を持っているわけではないのに、いざ試合になって勝ててしまうのが斎藤のスゴさ。対戦相手に『これならば打てる』と思わせて油断させておいて、要所を締めるピッチングができる。並みの精神状態の投手ならば相手に小バカにされていると思って大きく動揺し、そこを付け込まれてどんどん打ち崩されていってしまう。
ところが斎藤の場合は『このオレがやられるはずがない』と確信し切っているから、マウンドではピンチになっても基本的に平常心。この日のロッテ戦で対戦した相手打者たちも『打てそうで、結局打てなかった』『なぜ、140キロ台前半しか出ないストレートを打てなかったのか……』と一様に首をかしげていた。
彼は気持ちのはやる相手の心理状態を冷静に読んでウラを突くことができるのです。だから調子のいい時の彼は登板中も大崩れせずに修正が利く。ロッテのルイス・クルーズが対戦した斎藤について『ミステリアス・ピッチング(不可解な投球術)』と評していたそうですが、まさにその言葉がピッタリでしょう。
それでいて逆に打たれてしまったとしても斎藤は『こういう時もある』と恥ずかしがることもなく開き直れるんだから、彼は本当に図太い神経の持ち主と言える。いい意味で究極の“KY”なんでしょうね。どんな状況になっても『もうダメだ』とは思わない性分。それが斎藤佑樹という男なのです」
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