しょこたんが反対する、「ペットの殺処分」を劇的に減らす方法:窪田順生の時事日想(1/3 ページ)
タレントの中川翔子さんのTwitterが炎上している。捨て猫を保健所に連れていったという一般人のツイートを批判したのが発端だが、動物の殺処分は残酷なものだ。年間3万匹以上のペットが“殺される”日本だが、その背景にはペットビジネスの構造的な問題がある。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
タレントの中川翔子さんのTwitterが炎上している。
捨て猫を保健所に連れていったという一般人のツイートに、「保健所に連れていくなっ」とリプライを飛ばし、それにファンが同調してしまったことで、その一般人がアカウントを削除。これが「有名人が一般人を吊るし上げた」とかなんだとか批判されているのだ。
また、この一般人が保健所へ連れていったのは捨て猫を「譲渡会」という里親を探す集会に出すことが目的だったという指摘もあり、中川さんの“早とちり”という印象を与え、さらに火に油を注ぐ事態になっているのだとか。
ただ、「保健所」という言葉の響きに対して、半ばヒステリックに反応してしまった中川さんの気持ちも分からんでもない。私は犬の殺処分の様子を見たことがあるのだが、目を背けたくなるほど残酷である。二酸化炭素による麻酔で苦痛を与えないと言うが、麻酔がかかるまでガス室で苦しそうにのたうちまわる犬たちの姿は夢に出てきそうだった。
犬とか猫とかに特に思入れもなく「動物じゃん」くらいにしか思わない私ですら、こんな感想なのだから、動物好きの人からすれば、厳しく断罪すべき行為であることは想像に難くない。好意的に見れば、中川さんも“保健所へ連れて行く”という響きだけで、あの地獄絵図が頭に浮かんでしまったのだろう。
ただ、そんな中川さんのような「殺処分絶対反対」の方たちのがんばりもあって、日本の“殺処分”は減少傾向にある。環境省によれば、約40年前のペットの殺処分は年間115万9000匹。それが近年、動物愛護の声も高まったことに加え、年間で殺処分ゼロの神奈川県のように各自治体の取り組みが功を奏し、約3万8000匹程度まで減った(2012年)という。
この数字をどう考えるかはさまざまだろう。「3万匹か、まあそんなもんだろう」と冷静に反応をする人もいれば、「ええ! 3万匹のワンちゃん、ネコちゃんが……」と一気に暗い気持ちになってしまう心優しい方もいると思う。
確かに、国として殺処分ゼロのドイツをはじめ、動物愛護が進む欧州などと比べるとケタが1つも2つも違う。では、3万にも及ぶ遺骸の山をどうすればいいのか。
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