しょこたんが反対する、「ペットの殺処分」を劇的に減らす方法:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
タレントの中川翔子さんのTwitterが炎上している。捨て猫を保健所に連れていったという一般人のツイートを批判したのが発端だが、動物の殺処分は残酷なものだ。年間3万匹以上のペットが“殺される”日本だが、その背景にはペットビジネスの構造的な問題がある。
ペットビジネスの構造的欠陥
ペットの遺棄をさらに厳罰化したところで、山奥に産廃を捨てる業者や、ブラックバスを河に放流する人がいるように結局、当局とモラルなき人たちのイタチごっことなる。
そこで提案だが、ペットに関して「注文販売」を導入してはどうだろう。
ガス室送りになっている最も大きな要因は、「ペット愛好家が捨てるから」なのだが、その背景にはペットビジネスの構造的な問題がある。ご存じのように、ペットショップで売れるのは「しつけ」ができる生後4カ月まで。では、そこから大きくなった“売れ残り”はどうなるか。これがアパレルとかなら、夏物大バーゲンなどと在庫一掃処分もできるのだが、この商品はメシも食うし、排泄もするし、身体も大きくなる。
仕方がないので業者に“返品”をするわけだ。2008年度の環境省の調べでは、およそ犬は60%、ネコも56%が生産業者に返品、もしくはその他の動物業者に譲渡される。では、そこから先はどうなるのか。
これは正直分からない。タネ付け用としてその命をまっとうできるのはまだラッキーな方で、中には獣医師によって安楽死される場合もあるという。業者側は「みんな幸せに生きてますよ」というが、過去には元ブリーダーの女性が161匹の犬を不衛生な環境で飢えさせ、17匹がミイラ化していたなんて事件もあった。要は、ブラックボックスなのだ。
こういう“命の返品”が注文販売ならば極力減らすことができる。写真を見て、こういう犬が欲しい、こういう種類のネコが欲しいという注文を受けてから、ブリーターに発注をすればいいわけだから返品は劇的に減るだろう。何カ月か待つというのはかったるい、と感じる人もいるかもしれないが、どうやって生まれたのか、どういう親から生まれたのか、というストーリーも飼い主に教えてやれば、命を慈しむことも学べるし、一石二鳥である。
なーんて話を、ペット好きの人にしたら、「分かってないな、犬やネコは実際に抱いてみてこの子が欲しいとかなるんだよ。それに何カ月も待つなんて、一番のお客さんである子どもが我慢できるわけないじゃん」
やはりペット愛好家はペットショップでディスプレイされていて、その場で触れないとイヤだというのだ。いやでも、動物のことを「家族だ」と言い張るのなら、絶対にこちらに賛成だと思うのだが……。
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