航空業界へ参入したヘビメタ界の巨人に学ぶ、ビジネスで成功する戦略:人に話したくなるコラム(2/3 ページ)
航空業界といえば、飛行機事故や経営破たんなど、ネガティブな話題を想像する人もいるだろう。ビジネスの難しさが浮き彫りになっている業界だが、ニッチなサービスにフォーカスして注目を浴びている会社がある。それは……。
「徹底的に目立つこと」を実行
世界的なヘビメタバンドの顔として成功を続けてきたディッキンソンだが、異業種でビジネスを軌道に乗せることができたのは、「徹底的に目立つこと」を実行したからだ。
アイアン・メイデンといえば、ボーイング757をカスタマイズした特別機「Ed Force One」をディッキンソン自らが操縦し、バンドメンバーやクルーと機材を乗せてツアーをまわるという、前代未聞のド派手なパフォーマンスをしている。(実は、前回のツアーではこの特別機で成田空港に着陸するはずだった。しかし、その当日に東日本大震災が発生したため、名古屋に緊急着陸したという逸話も)
この特別機でワールドツアーをまわるパフォーマンスこそが、ディッキンソンにとって最大の利点をもたらしている。無駄に宣伝費を使わなくても、新しい事業をアピールするのに効果を発揮しているからだ。
競合他社の多いなかで成功するには、劇的に他との違いを出さなければ生き残れない。ヴァージン・グループの創業者、リチャード・ブランソンが新規事業を起こす際にタイムズスクエアに戦車で乗り込んだり、高層ビルから飛び降りたりなど派手で奇抜なパフォーマンスを行ってきたのは、世間の注目を集めヴァージンらしい遊び心を浸透させるため。無意味に乗務員の制服をミニスカートにしてもダメなのだ。
そして、ビジネスで成功するのにもうひとつ重要なのが、人にフォーカスすることだという。ディッキンソンは過去のインタビューで、「ビジネスの基本は人々のニーズに答えることだ。それ以上でもそれ以下でもない。この基本的な事実を認識する必要がある」と語っている。ビジネスとは、本来シンプルなものだ。アイアン・メイデンのコンサートで、ファンが求める最高のパフォーマンスを追求してきた、ディッキンソンならではの発言だろう。
また、リチャード・ブランソンが航空業界に進出したのも、市場の欠陥に気づいたから。「乗務員が親切」という、ごくシンプルなサービス改善とヴァージンらしい遊び心を加え、「人にフォーカスする」ことで他社との差別化に成功している。ちなみに、いまでは当たり前の座席埋め込み型スクリーンを世界で初めて全席に導入したのも、ヴァージン航空だ。
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