次のブームは? “変わりうどん”が流行る日:仕事をしたら“うどん”のことが見えてきた(後編)(2/5 ページ)
うどんの本場「香川県」から大手外食チェーン店が生まれていないが、ラーメン業界はどうなのか。香川大学大学院の高木准教授に話を聞いたところ、意外な事実が。それは……。
ラーメンは「分散型事業」
土肥: つまり、うどん業界と同じように、ラーメン業界も“本場”からはチェーン店が生まれていないと?
高木: 幸楽苑を除いて、ですね。大手ラーメンチェーン店をみると、売上規模は200億〜400億円ほどでそれほど離れていません。しかし、収益力はまちまち。例えば、最大手の幸楽苑の利益率は2003年から下落傾向です。1店舗当たりの平均売上高は2002年の1億1300万円をピークに下がり始め、現在は7400万円。なぜこれほど経営効率が下がったかというと、幸楽苑は“安売り競争”に巻き込まれてしまったんですよ。
当時の経営者は「ラーメンを値下げすれば、集客力がアップするので、売り上げがアップする」と見込んでいました。しかし、いざフタを開けてみると、原価率の高いラーメンに注文が集中したので、業績が悪化しました。
ラーメンの安売り競争で思い出されるのが、1997年に創業した「びっくりラーメン」。フランチャイズを中心に2005年には189店まで拡大したのですが、それ以降業績は悪化し、2007年に吉野家ホールディングスに買収されました。しかし、再建がうまくいかず、2009年に清算されました。
土肥: ラーメン1杯が189円でしたね。
高木: 幸楽苑はラーメンの価格を安くすることで業績が低迷したのですが、その一方で日高屋は好調なんですよね。この4年間の営業利益率は12%前後を維持しています。ちなみに、幸楽苑は2.4%で大手4社の中で最も低い。日高屋の1店舗当たりの売上高は9000万円を上回っているのですが、なぜ好調なのか。ラーメンの価格は安くせず、夜の居酒屋でもうけているんですよね。
土肥: なるほど。
高木: うどんの大手チェーン店をみると、規模が大きければ大きいほどもうかる「規模型事業」なんですよ。なぜこうした傾向になったかというと、うどんの出汁は魚介系のみなので単純。そのため、規模の経済が出やすい。
一方のラーメンチェーン店については、小規模経営の店がひしめく「分散型事業」。うどんと違ってラーメンは、麺の種類、スープの材料、元ダレ、香味油、トッピングなど競争変数が多く、いろいろな組み合わせが可能。なのでそのぶん差別化がしやすく、「自分もラーメン店を経営したい」という人がいまでも多い。
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