プリン約4000個を誤発注――ツイッターの呼びかけで完売:なぜ人は“動く”のか(1/2 ページ)
1000人――、人を動かすことを考えるときの最少単位。いざ動員を試みると決して容易ではない数字でもある。今回は、プリン4000個を誤発注したという実際の事例をもとに、1000人を動かす条件を探ってみたい。
集中連載「なぜ人は“動く”のか」について
本連載は、本田哲也、田端信太郎著、書籍『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋、編集しています。
映画『アナと雪の女王』は、なぜ1000万人を動かしたのか?
LINEは、なぜ4億ユーザーの心をつかんだのか?
誤発注されたプリンは、なぜ完売したのか?
インターネットの普及などにより流通する情報量が爆発的に増える一方、生活者はネットやHDDレコーダーなどを活用し、自分で情報を選択するようになっています。そんななか、旧来のマス広告やメディア露出では、昨今、人は動かなくなっています。
大々的な広告キャンペーンやメディア展開をせずに人を動かすことに成功した事例を、1000人、1万人……、1億人、10億人と、スケールごとに分析。生協のプリン誤発注からアナと雪の女王、LINEまで、そのヒットの秘密を探っていきます。
広告・メディア業界人はもちろん、企業経営者、マーケティング担当者も必読の一冊です。
プリン約4000個を誤発注
2012年11月、京都教育大学の大学生協が大量のプリンを誤発注する騒動があった。
通常なら20個注文するところを、PCの入力ミスで4000個注文。単純計算すると、1個105円×3980個=41万7900円の損失になりかねない。
大学生協では開店早々、「大変な発注ミスをしてしまいました」と張り紙を掲示。学生たちに誤発注があったことを知らせ、購買を促した。
事情を知った学生も、Twitterで情報拡散を呼びかけた。
陳列棚に山のように積まれたプリンの写真と一緒にツイートしたことも効を奏したのか、次々とリツイートされ、情報が一気に拡散。さらに誤発注の張本人である女性職員の様子をツイートする者も現れる。
「めっちゃシュンてしながらレジ打ってた」
「今は在学生のほとんどがプリンを買ってる状況です」
プリンは即日完売し、“ネット上の美談”として情報番組でも取り上げられた。
その後も誤発注がTwitterで広まり、完売するという事例が相次いだ。「中華丼260個」(東京都のコンビニエンスストア)、「デコレーションケーキ80台」(三重県のケーキ店)など。似たようなケースが立て続けに起こったため、一部のネットユーザーからは“誤発注商法”と冷やかしの声もあがった。
2014年6月末には、岡山県のスーパーがおにぎりを誤発注したことをTwitterで明かし、助けを求めた。通常では約60個仕入れるところを、誤って2000個発注したが、1日で完売にこぎつけた。
ざっくり言うと……
- 2012年11月、京都教育大学生協が約4000個のプリンを誤って発注する。
- 事情を知った学生がTwitterで購買を呼びかけ、同日昼すぎには即日完売。
- 似たような事例が相次ぎ、「誤発注商法」と揶揄(やゆ)する声も。
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