連載
なぜ『朝日新聞』は池上彰さんの連載原稿を掲載しないと言ったのか:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
『朝日新聞』が大変なことになっている。ジャーナリスト・池上彰さんの原稿を、『朝日』の報道局が掲載できないと突っぱねたことが明るみに出たからだ。こうした不可解な言動が続く背景には、何があるのだろうか。
『朝日新聞』がヘソを曲げているワケ
こういう話を聞くと、愛国心あふれる方たちの場合、「この期に及んでまだこんなことを言っているとは、やはり朝日は反日だ」とかなるのだろうが、個人的には『朝日』がここまで頑なにヘソを曲げるのは、「反日」だからではないと思っている。
以前のコラムにも書いたが、吉田証言に関しては『朝日』の対応はとてもまともとは思えない(関連記事)。池上さんの「言論」をこっそりと闇に葬りさろうとしたのも、現場記者からも怒りの声が出たように明らかに常軌を逸している。
ただ、これらの異常な行動のすべてを「反日だから」で片づけてしまうのは乱暴だと言っているのだ。
いろんな企業で報道対策をしてきた経験から言わせていただくと、ここまで『朝日』の対応が酷い背景には、国家間の壮大な陰謀論とかではなく、もっとくだらない理由が見えてくる。それは、経営陣を「元記者」が占めているということだ。
『朝日新聞』の社長は代々、政治部と経済部が交代でやっている。先ほどの全社メールを送った木村社長は政治部出身だ。副社長は経済部、ほかの役員にもずらっと記者出身者が並ぶ。
それがどうしたと思うかもしれないが、これは海外のジャーナリストなんかに言わせると、かなり「異常な組織」だという。なぜかというと、世界的にみれば、新聞社だろうが、テレビ局だろうが、巨大企業の経営というのは「経営のプロ」が担っているからだ。
関連記事
- NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - 借金大国日本で“踏み倒す人”が急増している理由
国民年金、給食費、授業料、治療費……今、公的な支払いを踏み倒す人が増えている。この背景には、いったいどんな「裏」があるのだろうか? - なぜ世の中に悪い人は少なく、いい人が多いのか
「また騙された。正直者がバカをみる世の中はおかしい」と感じたことがある人も多いのでは。トクをするのであれば悪い人が増えそうだが、この世はいい人のほうが多い。なぜか? そこで動物の行動に詳しい、竹内久美子さんに人間の生き方を聞いた。 - 『朝日新聞』をダマした吉田清治とは何者なのか 慰安婦強制連行を「偽証」
朝日新聞が「慰安婦」報道をめぐって揺れている。吉田清治の「慰安婦狩りをした」という証言について、朝日は誤りを認めたが、他は一歩も引かない構え。それにしても、この吉田という人物は何者なのか。調べてみると、興味深いことが……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.