おサイフケータイとは違う――iPhone 6/6 Plusで使える「Apple Pay」で何ができる?:一般的なNFCとは互換性なし(5/5 ページ)
新型iPhoneと共にAppleが発表した新サービス「Apple Pay」。NFC採用ということで「日本でもiPhoneがおサイフケータイのように使えるのでは」と期待している人もいるだろう。Apple Payとは何か、どんなことができるのか取材した。
Apple Payの仕組みをそのまま日本のおサイフケータイとして使うのは難しい
もうお分かりかもしれないが、現時点ではiPhoneで日本の「おサイフケータイ」を利用するのは難しい。つまり「モバイルSuica」「楽天Edy」「nanaco」「WAON」といったサービスをiPhoneに登録して、買い物やポイント付与、公共交通の利用……はできないということだ。
Apple Payでは、クレジットカードを1枚追加するごとに、Passbookのカードの1つとして次々と登録が行われる。登録されたクレジットカードはPassbookの一部として管理され、それ以外の使い勝手は従来のPassbookそのままだ。本来であれば、モバイルSuicaなどのおサイフケータイのサービスも“カード”の1つとして登録できるはずなのだが、「Apple PayがNFC+セキュアエレメントを外部に開放していないこと」「そもそも(Apple Payが採用する)Type-A/Bと(おサイフケータイが採用する)FeliCaは互換性がないこと」という2つの理由により、Passbookへの登録もできずに利用する手段がない。このあたりが日本で利用するうえでの残念なポイントだ。
Apple Payは「囲い込みサービス」、利用できるのも当面は米国のみ
ここで1つ分かるのは、現時点でAppleは「Apple Pay」をiPhone以外の環境に展開する計画はなく、さらに他の決済サービスをiPhoneに呼び込むつもりもないということだ。
とはいえ、仮に米国の携帯電話ユーザーの1割弱がApple Payを利用したとすれば、3000万人規模のユーザー数となる。これは非常に大きなインパクトだ。しかもiPhoneを使うような層は比較的富裕で購買意欲が高く、決済回数や売上全体でみても優位に働く可能性が高い。
米国以外ではどうだろうか。iPhoneユーザー率の低い欧州などでは利用者も少ない傾向が予想できる。逆に、米国より高いユーザー率を誇る日本ではそもそもFeliCaのインフラが中心で、Apple Payとは決済方式が異なるという事情もある。現在、Appleは同サービスを海外展開すべく各国小売店やカード発行会社との交渉を進めているといわれるが、国内外での温度差は大きいというのが筆者の見解だ。米国内でもWal-Martなどの事業者はApple Payへの対応を拒否したと報じられており、必ずしも盤石ではない。
以上を踏まえると、Apple Payの導入がAppleの業績を押し上げる可能性はそこまで大きくないというのが筆者の意見だ。ユーザーに利便性を提供するものの、エコシステムは完全に閉じられており、「囲い込みサービス」の一種だといえる。今後、iPhone内のセキュアエレメント利用を外部に開放する一方で利用料を徴収したり、Apple Payそのものを他の端末プラットフォームに提供することで手数料ビジネスを成立させる可能性もあるが、いまのAppleにそうした意図はあまり感じられない。
関連記事
- iPhoneがおサイフケータイになる日:おサイフケータイ登場から10年、未来のFeliCaはどうなる?
コンビニやスタバなどFeliCa電子マネーでお金が払えるところは増え続けている半面、iPhoneなどおサイフケータイ非対応のグローバルなスマホ人気もあり、ここ数年おサイフケータイの歩みは止まっているように見える。FeliCaとおサイフケータイは今後どうなっていくのか? 最新事情をレポートする。 - ビジネスパーソンが理解しておくべき、新時代のキーワード:第1回 「iBeacon」とは何か?
ビジネスパーソンが理解しておくべき「新時代のキーワード」をしっかり理解しているだろうか。今回は2014年以降のO2Oマーケティングの切り札とも言われる「iBeacon」の“そうだったのか”を解説しよう。 - ビジネスパーソンが理解しておくべき、新時代のキーワード:第2回 現在、「iBeacon」が抱える課題
前回は「iBeacon」の基本を解説した。続いて今回は、すでに稼働している事例を参考に「決裁手段」はどうか、そしてiBeaconが現在抱えている課題を考察する。 - iPhone 6/6 PlusのNFCは当面「Apple Pay」機能のみ──Cult of Mac報道
間もなく発売されるAppleのiPhone 6/6 PlusにはNFCチップが搭載されるが、当面はモバイル決済「Apple Pay」のみをサポートし、端末のペアリングなどには使えないとAppleがCult of Macに語った。 - iPhone 6/6 Plusは5s/5cからどう変わった?
iPhone 6とiPhone 6 Plusは昨年モデルのiPhone 5s/5cからどう変わったのか。変更点をチェックしよう。 - Apple、ウェアラブル端末「Apple Watch」発表
ついにAppleのウェアラブル端末「Apple Watch」が姿を現した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.