アバクロが衰退した原因はどこにあるのか:人に話したくなるコラム(2/3 ページ)
米国アパレルブランドのアバクロンビー&フィッチが苦境に立たされている。2010年以降、米国内では既に200店舗以上を閉鎖していて、今年も60店舗を閉じる予定だ。かつて若者に絶大な人気を誇ったブランドは、なぜ衰退してしまったのか。
アバクロ失速の原因
アバクロの失速はどこに原因があるのだろうか。まず、アバクロが得意とするロゴの入ったデザインは時代遅れになってきた。ほんの10年ほど前は、「Abercrombie & Fitch」のロゴがデカデカと入った同ブランドの服はセレブも愛用したことで爆発的な人気になり、飛ぶように売れた。若者にとっては、クール(イケてる)だった。しかし、今の若者にはロゴが目立つデザインは好まれない。彼らは、人とは違う個性を主張できるデザインを求めているからだ。ブランドにとっては不本意かもしれないが、アバクロでもロゴを控えめにした商品を増やしている。
次に、大きめのサイズ展開に踏み切ったことだ。「モデル体型」ではない「リアルサイズ」のモデルを採用して幅広いサイズ展開を行ってきた競合ブランドに対し、アバクロは基本的に細身のデザインを貫いてきた。しかし、そのブランド戦略には限界がきていることが判明する。現代の若者は、モデルのような理想的なボディを目指すのではなく、リアルな自分を受け入れそれが一番いいと感じている。だから、服の選び方も従来と異なり、服に合わせるのではなく自分に合う服を探している。
そして、一番驚いたのはブラックカラーの服の販売に踏み切ったことだ。これまでアバクロではブラックカラーの服を販売することはもちろん、社員が着用することすら禁止してきた。それは、マイケル・ジェフリーズいわく「アバクロは、カジュアルライフスタイルのブランドだから、黒というのはフォーマルに感じる」からだった。しかし、そんなブランドコンセプトすら若者には関係ないようだ。彼らにとっては、自由で幅広い選択肢があることが何よりも重要だからだ。
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