あなたの家族に忍び寄る「介護で家庭崩壊」の危機:INSIGHT NOW!(2/3 ページ)
あなたの親、またはあなたの配偶者の親が要介護状態になったら……。そのとき「在宅介護」を余儀なくされたら……。あまり考えたくないリスクとはいえ、家庭崩壊の危機はすぐそこまで忍び寄っている。
田舎にいる母親の介護、どうすればいい?
あなたは50手前の既婚男性。父親はすでに亡くなっており(その介護を独力でやり遂げた)母親が1人、実家で暮らしている。
――なるほど。お母さんが最近転んでしまって、要介護認定を受けたと。しかも、いつの間にか認知症が進んでいることが分かったんですね。それで適切な介護施設を探しているけど、空きが全然見つからないと……。どこも人手不足ですからね。お母さんの面倒を見てくれる兄弟姉妹は実家の地元にいらっしゃらないのですか。確かにそれは大変ですね。
自宅にお母さんを呼んで、そこで介護したいとお考えですか? しかし、都会の狭い家にさらに老齢の家族を増やせますか? 介護となればベッドを置く部屋が必要です。大きくなったお子さんから部屋を取り上げますか? そもそも誰が介護を担うのですか。
奥さんのご両親であれば、奥さんが仕事を辞めても……ということに落ち着くのでしょうが、旦那さんのお母さんであれば、奥さんに仕事を辞めてもらって、介護に張り付けることに抵抗は小さくないでしょう。では、あなたが退職して介護しますか? 一家の収入は激減しますね。それとも夫婦2人で在職したままやりくりしますか?
今までのように残業はできませんし、昼間に付き添う必要もしょっちゅうあります。介護休暇なんてすぐに使い果たしてしまいます。あなたの会社にはそうした理解が行き届いた制度はありますか? 夫婦でやりくりするとしても、年数があらかじめ限定されていればともかく、介護はいつまで続くか分からないから精神的に大変なのです。自宅介護を担うのは並大抵の苦労ではありません。
いっそのこと一家で田舎に引っ越して、実家またはその近所に家を構えて、そこで介護をしますか? 会社を辞めざるを得ないですが、都会でやっていたような仕事は田舎にはありません。故郷の友人の“つて”で何かまともな仕事が見つかる人は非常に幸運です。これから農家や林業を始める気力や体力がありますか? 「誰が介護を担う?」という問題も残っています。今さら旦那さんの田舎に引っ込んで、旦那さんのお母さんの介護をやってくれ、と奥さんに頼んだらどうなるでしょう。
では、あなたが単身で実家に移り住んでお母さんの介護をしますか? 奥さんとお子さんは都会に住んだまま。でもあなたは退職せざるを得ないですから、一家の収入は激減しますね。奥さんが働いている場合も、2カ所に離れ離れに住む一家を支えられるかというと難しい。パートの仕事では無理かもしれません。逆にあなたが都会に残って仕事を続け、奥さんに田舎に引っ越してもらって、お母さんの介護をお願いしますか? それもまた離婚沙汰になりかねません。
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