実はカジノができて問題になるのは「ギャンブル依存症」ではない:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
今国会で「カジノ法案」が通過しそうなので、反対派の熱がヒートアップしてきた。あるメディアは「ギャンブル依存症拡大」という見出しをつけてきたが、本当に依存症の人たちが増えるのか。この問題よりも、心配なのは……。
日本中にギャンブル依存症が溢れかえる!?
カジノ議論がわきあがってからやたらと引き合いに出されているので、「シンガポール=カジノ」みたいなイメージがあるが、実は大多数の国民はカジノと無縁の生活を送っている。同国当局によれば、カジノに通っているのは「成人人口の7.7%」にとどまっているという。なぜこんなに少ないかというと、カジノに入場する際に100シンガポールドル(8000円ほど)の入場料を支払わなければいけないからだ。
実はシンガポールもIRを導入する際、今の日本のように「ギャンブル依存症が増えたらどうする」という批判の声があがったことがあり、当初は自国民の入場禁止ということになっていたのだ。これに待ったをかけたのが、ラスべガスサンズやゲンティンというIRオペレーターである。
ご存じのようにかつてのシンガポールは金融資産を移すだけで永住権をもらえるという手軽さや、金持ちに優しい税制などで世界中から富豪が移り住んだ。そういう“上客”がわんさかいるというのがシンガポールでIRをつくる旨味のひとつだったのに、それがダメというならそもそもやる意味がない、ということで結局、高額な入場料を課すという妥協案に落ち着いたのである。
その代わりと言ってはなんだが、IRオペレーター側(運営事業者)も、ギャンブル依存者本人や家族が入場禁止措置を申請できる制度を導入。2013年6月には低所得者などの入場回数の規制も始めたのである。
もし仮に日本にIRが導入されるとしても、このようなトレンドからシンガポール並、あるいはそれ以上の厳しい「自国民規制」がかかるのは容易に想像できる。少なくとも、パチンコ・パチスロや場外馬券売り場のように成人であれば誰でも気軽に立ち寄れる「開かれた賭場」になるわけがない。
つまり、カジノを解禁したら、日本中にギャンブル依存症が溢れ返るという批判は感情的な部分ではよく分かるのだが、今の日本のギャンブル事情を考えるとかなりビミョーな話なのだ。
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