実はカジノができて問題になるのは「ギャンブル依存症」ではない:窪田順生の時事日想(3/4 ページ)
今国会で「カジノ法案」が通過しそうなので、反対派の熱がヒートアップしてきた。あるメディアは「ギャンブル依存症拡大」という見出しをつけてきたが、本当に依存症の人たちが増えるのか。この問題よりも、心配なのは……。
IRオペレーターが狙っているのは「富裕層」
これに加えてハナからIRオペレーターたちも、一般の日本人をギャンブル依存症にしようなどという気はサラサラない。先ほども述べたが、IRオペレーターたちがターゲットにしているのは「富裕層」だ。
海外の金融機関が、日本のカジノ市場は世界一になるポテンシャルを秘めているとかなんとか分析をしているのは、日本人はパチンコの新装開店に並ぶ人が多いとか、土日のウインズ(場外勝馬投票券発売所)が混雑をしているからとかではなく、富裕層が世界で2番目に多いからだ。
あまりピンときていないかもしれないが、日本には純金融資産1億円以上の富裕層が260万人いるという。ただ、日本の富裕層は「地主」が多くてキャッシュリッチが少ないことから、なかなか消費をしない。しかし気軽に行けるカジノができたら大王製紙前会長の井川意高さん(子会社から総額106億8000万円の資金を借り入れ、カジノで散財した)みたいな人がポロポロでてくるのではないかという皮算用をしているのであって、我々のような庶民などハナから期待されていない。
よくIRは外国人観光客を呼び込むことができるというが、これも大きな誤解があって、その「外国人観光客」というのは浅草や京都にバックパックを背負ってやってくる欧米の観光客などではない。では誰かといえば、マカオのIRを世界一に押し上げた「中国人富裕層」である。
シンガポールへの観光客の割合をみると、インドネシアが最も多く19.3%、次いで中国人が16.1%。割合としては16%ほどにすぎないが、この中国人たちがIRの収益を支えているのだ。先日、シンガポールのカジノを取材に行った時、何人かのシンガポール人に「カジノに行く?」と聞いてまわっていたら顔をしかめながら、こんなことを言っていた。
「行かない。シンガポールのカジノは中国人のためにある」
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