北陸新幹線効果で企業移転が相次ぐ、その理由は?:杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)
北陸新幹線の金沢延伸開業まであと半年。特急料金も発表され、石川県、富山県では観光誘致に勢いが付く。そして、企業も北陸に注目し始めている。北陸に進出する企業の動向をふかんすると、北陸新幹線の利便性だけではない理由があった。
航空運賃と比較しても「絶妙な値付け」
在来線運賃と比較して大きな値上がりとならなかった理由は、在来線ルートに比べて新幹線のルートはショートカットされているからだ。
在来線経由に比べて運賃が安くなっている。これが東海道新幹線・山陽新幹線との大きな違いだ。東海道新幹線と山陽新幹線は在来線の複々線区間という考え方で、線路が短縮されても運賃計算に使う距離は同じである。余談だが、過去にこの制度を不服として国鉄を訴えた民事訴訟もあったけれど、運賃決定は鉄道側の裁量の範囲として訴えは退けられた。
北陸新幹線の場合、長野―糸魚川間がほぼ別ルート。糸魚川―金沢間は並行在来線を経営分離するため、同じ路線とは認められない。だから実際の距離に即した運賃となった。ちなみに東北新幹線の盛岡―新青森間も同様だ。
航空運賃と比較してみよう。東京(羽田)―富山の正規運賃は2万4890円(ANA)。東京(羽田)―金沢(小松)間は2万7390円。メディアはこの数字を使って新幹線の安さを強調するわけだけど、航空運賃は予約割引がある。座席数に限りがあるとはいえ、東京―富山のANA旅割60は約2か月前(60日前までの)予約で1万690円〜1万5690円(*)だった。
同じく東京―金沢はANA旅割60が1万690円〜1万3690円で、JAL国内線スーパー先得55(55日前までの予約での運賃)が1万790円〜1万3890円となっていた(*)。新幹線運賃はこの価格帯に収まっている。当日買ってもこの値段だ。絶妙な値付けだ。JR東日本さん、JR西日本さん、あと2000円くらい高くてもよいと思うが……。
さて、いままで速度だけで語られた北陸新幹線に、運賃が設定された。これでいよいよ北陸地域の動きが活発になる。その影響は観光だけではない。
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