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物流が止まる、経済が止まる──「鉄道貨物輸送の二重化」を急げ杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)

台風18号が起こした土砂崩れで、東海道本線の一部が10日間にわたって不通となった。旅客輸送は振り替え輸送で対応できたが、貨物輸送は極めて厳しい事態になり、大きな課題を残した。筆者が提案する解決策は「東海道本線の二重化」。その理由は……。

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東海道本線二重化の可能性を探る

 東名高速道路は第2東名高速道路の整備によって二重化されている。そこを走るトラックドライバーが不足するとは皮肉な状況だ。それはともかく、東海道本線にも第2東海道本線を作れ、とはさすがに言えない。過剰投資だ。

 しかし、東海道新幹線がある。東海道新幹線で貨物コンテナを輸送するシステムを研究開発する価値はありそうだ。これは東海道新幹線の当初の計画にもあった。常用化できればいちばんいいけれど、せめて災害時にコンテナを輸送する体制はほしい。新幹線の大井車両基地と東京貨物ターミナルは隣接しているし、大阪も新幹線の鳥飼車両基地と大阪貨物ターミナル駅は隣接している。災害時の代行輸送だから、新幹線並みのスピードはいらない。

photo 東京貨物ターミナルは新幹線車両基地のとなりにある

 そしてもう一つ。今回は検討されなかったけれど、船による代行輸送は可能だろうか。これはJR貨物の12フィートコンテナを船舶に対応できるかがカギとなる。鉄道貨物輸送については12フィートコンテナから31フィートコンテナ、あるいは国際規格のISOコンテナへに移行すべきだと私は思っている。非常時の船舶輸送に対応するためにも、コンテナ規格の移行は進めてほしい。

 既存の鉄道施設を最大限に活用するなら、やはり在来線の迂回ルートの整備が大切だ。特に中央本線ルートの整備を急ぎたい。日中は旅客列車が多く、貨物列車の増発は難しいとしても、非常時の夜間に貨物列車を続行運転する段取りはつけたい。いま、モーダルシフトの問題点として、トラック輸送ぶんの荷物を鉄道貨物に移行しようとしても、列車が足りない状況になりつつある。いつでも増発できる環境整備が急務だ。

 中央本線だけでは足りない。日本海沿岸ルートも整備したい。しかしここで一つ懸念がある。北陸新幹線の開業によって、北陸本線と信越本線の並行在来線区間が第3セクターになってしまう。各社がJR貨物の突発的な要請に、臨機応変に対応してくれないと困る。そもそも、日本の物流の全体像を考える時に、果たして並行在来線を地元自治体に押しつけるだけでよいのか考え直すべきかもしれない。

 「万が一のトラブルでも、お客様へのご迷惑は最小限です。なぜなら、線路はすべて二重化されていますから」

 IT業界では当たり前の手段やサービスを、鉄道貨物も備えてほしい。



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