上場したリクルート、次に何を狙う?:新たなスタート(2/2 ページ)
10月16日、東証一部に新規上場を果たしたリクルートホールディングス。記者会見で峰岸真澄社長は中長期で財務戦略の多様性を得て、2020年には人材領域、2030年には人材・販促領域で世界トップになるという目標を掲げた。
新たなるスタート
リクルートは2009年に、海外採用などを支援する「RGF(リクルート・グローバル・ファミリー)」を中国に展開し、2010年には米国で派遣事業を運営する「CSI」を買収。人材派遣業を中心に海外へ進出する上で、グループで培ったマーケティングなどのノウハウを生かし、M&Aで子会社化した企業の収益性向上に自信を示す。また、求人専門検索エンジンを運営する「Indeed」の業績(2013年は249億円、前年比90%増)が好調。「(Indeedには)優秀なエンジニアがたくさんいるので、彼らの能力をリクルートのエンジニアに注入していきたい」(峰岸社長)とグループとしてのシナジー効果も見込めるとしている。
さらに、峰岸社長は上場によって中期的に約7000億円の投資余力を確保できるとしており、M&Aや提携企業について「人材派遣市場のうち約8割は先進国で占められている。先進国での売上規模が1000億円以上の企業がM&Aの対象になる」とも発言。「運営サービスを通じて雇用決定人数でナンバーワンになりたい」とし、人材派遣サービスとメディアをともに押さえている企業の強みを生かしていく考えだ。
リクルートは1988年の「リクルート事件」(リクルートの関連会社で、未上場の不動産会社「リクルートコスモス社」の未公開株が賄賂として譲渡された)によって、創業者の故江副浩正氏が身を引いたほか、不動産・金融事業の有利子負債を約1兆4000億円も抱えるなど(その後、完済)、90年代は辛酸をなめた。
リクルート事件時は入社2年目だったという峰岸社長は「これまでのユーザー、取引先、株主といった全ての人の支援に感謝したい。これからの期待への責任を感じている」と述べる一方、「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ」という江副氏の言葉を引き合いに出すなど、1960年の創業から54年という異例の長期で果たした上場に対する感慨もにじませた。
グローバル展開を果たす上で、知名度が高いとはいえない「リクルート」というブランドをどのようにアピールしていくのか。また、企業規模が拡大する上で、強みという従業員の「起業家精神」を維持することができるのか。新たなるスタートを切ったグループの動向が注目される。
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