マツダの生産現場で活躍する「からくり」とは? 情熱が生み出した改善:工場潜入(後編)(3/3 ページ)
日本人形がひとりで歩きお茶を運んでくる「からくり人形」。そんな電池やモーターを使わずとも複雑な動きを見せるからくり人形の考え方を、クルマの生産現場で生かしているのがマツダの工場だ。生産現場に潜入して、目にしたものは……。
からくり改善のメリット
また、優れたからくり改善は、年に1回、本社工場「からくり改善くふう展」として社内全体に披露する機会が設けられている。ここには、マツダの工場だけでなく、この活動に賛同する地元の協力工場も加わっていて、会長や社長も出品作を見ることもあり、マツダグループ全体でいい刺激になっているという。さらに、優秀なからくりは、日本プラントメンテナンス協会が主催する全国大会にも出品。これまでに「もみじまんじゅう式ピアノ」をはじめ毎年のようにマツダは賞を受賞している。
からくり改善のような生産ラインの効率や環境改善は、もちろん本格的な自動制御の機械を導入して実現することもできるが、それでは大きな投資が必要となる。また、ひとたびトラブルが発生すると、その装置を修理する専門家を呼ぶために時間もかかる。また、こうした装置をほかの作業工程に展開する場合も、やはり大きなコストやエネルギーが必要だ。その点、からくり改善はつくりがシンプルなので導入コストが低く、故障しても修理しやすい上に、現場の作業者自身が生みの親であるため、当事者として修理や改良に当たることができるというメリットも大きい。
さらにからくり改善のメリットは、こうした開発やメンテナンスのさまざまなコストに関するメリットだけでなく、作業に従事する従業員ひとりひとりのモチベーションにもいい影響をもたらしている。それについて池原氏はこう語る。「自分が作り出すという点で達成感が得られ、作ったものだからこそ愛着も生まれまる。それだけに使っているうちに気になる点が出てきてもなんとかうまく使えるように改良しようと思えるものです。そんな自分が当事者となって取り組む楽しさを感じることで、生産現場からも自ら考えて生み出すことに挑戦する風土を作っていきたいと考えています」
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