日本の国宝を守る英国人アナリストに学ぶ、日本人の壁を越える方法:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
日本人よりも日本のことを分かっている外国人はたくさんいる。文化財などを修繕している「小西美術工藝社」の社長を務めるデービッド・アトキンソンさんもそのひとり。彼が精通しているのは「文化」だけではなく……。
伝説のアナリスト時代のエピソード
そんな異色の経歴をもつデービッドさんの本が10月21日に店頭に並ぶ。『イギリス人アナリスト日本の国宝を守る』(講談社α新書)である。
アナリストらしいデータに基づいた日本経済の分析や問題の指摘は非常に興味深い。なかでも、雇用400万人、GDP8%成長できる「文化財保護政策」を用いた成長戦略は、ぜひとも安倍首相をはじめ閣僚のみなさんに読んでいただきたいところだ。もちろんそのような提言だけではなく、純粋に「読物」としても楽しめる。個人的には、アナリスト時代のエピソードがオススメである。
オックスフォード卒業後、アンダーセンコンサルティングに就職をしたデービッドさんはほどなく「コンサルタント」という仕事に疑問を抱き始め、日本赴任時にソロモン・ブラザーズ証券に転職。ここで当時、日本社会で大きな問題になっていた不良債権の実態を暴くレポートを発表し、日本の金融業界にその名を轟(とどろ)かせる。
今でこそちゃんちゃらおかしい話ではあるが当時、日本政府も銀行も、さらにはマスコミも不良債権はせいぜい数兆円だと見積もっていた。それをデービッドさんたちが20兆円と指摘したことで大騒ぎになったのだ。
銀行幹部から「ふざけるんじゃない!」「訂正しろ!」などという抗議電話が殺到し、なかにはヤクザのように恫喝をする人もいました。日本の銀行員は大人しいと思っていましたが、怒らせると本当に恐ろしいと痛感したものです。
しかも、怒ったのは銀行だけではありません。
「米政府がソロモンをつかって日本経済をダメにしようとしている」
なんて陰謀説が流れたせいか、会社に脅迫状のようFAXが大量に送られてきて、右翼の街宣車までやってきたのです。
※『イギリス人アナリスト日本の国宝を守る』(9ページ)
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