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日本の国宝を守る英国人アナリストに学ぶ、日本人の壁を越える方法:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
日本人よりも日本のことを分かっている外国人はたくさんいる。文化財などを修繕している「小西美術工藝社」の社長を務めるデービッド・アトキンソンさんもそのひとり。彼が精通しているのは「文化」だけではなく……。
日本人の壁を越えるための良薬
実際には20兆円どころではなかったので、後にデービッドさんの分析が正しいことが証明されたわけだが、レポートを公表直後は「CIAの手先」などと罵(ののし)られたあげく、会社から「当分の間、日本を離れろ」と命じられて“国外避難”までしたという。
「情報操作」をテーマに取材している身からすると、こういう現象は非常に興味深い。とにかく「大本営発表」のみを妄信して、数字に基づく分析を社会全体でヒステリックに潰しにかかるこの感じや、外国人に耳の痛い指摘をされた時に「陰謀だ」とか騒ぐ偏狭なナショナリズムがなんとも日本人らしいなとも思う。
25年も日本で暮らし、日本を分析し続けてきたデービッドさんの視点は日本人に多くの示唆を与えてくれる。デービッドさんと親交のある解剖学者の養老孟司さんも帯にこんな推薦文を寄せている。
「日本人の壁を越えるための良薬。著者は日本人よりも日本のことをわかっている人です」
「日本通」の外国人は珍しくない。しかし、金融業界という日本経済の最前線から国宝や文化財という日本文化の深みにいたるまで身をもって経験し、なおかつ一流の「分析」ができる外国人となるとかなり貴重な存在ではないだろうか。日本人として「日本」というものを改めて考えてみたい方はぜひ手にとっていただきたい。
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